【関連記事】借金の返済まで免除に…“自己破産”が認められる「3つの条件」
手続終了後、「やはり破産は認められない」となる場合
破産手続が終了すれば、裁判所は、破産事件のなかで免責不許可事由がないかを審理します。免責不許可事由とは、借金を帳消しするには債権者に対し不公平となる事情のことで、主に次のようなものがあります。
①浪費が理由の借金……無駄遣いのことです。パチンコや競馬、競輪などのギャンブルやキャバクラや風俗通いなどがその代表例で、収入に見合わない高額な買い物や外食なども、金額や頻度によっては浪費とみなされます。
②特定の債権者にだけ返済をした(偏頗的な非本旨弁済)……お金を借りた人のなかから、特定の人にだけ借金を返済することを「偏頗弁済」といい、債務者の義務に属さない時期などに偏頗弁済をすると、免責不許可事由に当たります。
③カードで買った商品を換金した……クレジットカードなどで商品を購入し、その商品を廉価で換金する行為は免責不許可事由に当たる可能性があります。例えば、クレジットカードで新幹線の切符や商品券を購入し、それを金券ショップに安く売る行為がこれに当たります。
④裁判所に嘘の申告をした……自己破産の手続き中に管財人の調査に協力しなかったり、嘘の説明をしたりしたときは免責不許可事由に該当します。
⑤わざと財産を隠した……債権者に損害を与えるために、配当の原資となる財産(破産財団)をわざと隠したり、壊したり、ただで人にあげたりした場合は、詐害行為として免責不許可事由に当たります。また破産管財人の仕事を妨害したときも同様です。
もっとも、免責不許可事由に当たる行為をした場合であっても、免責許可が下りないのは、わずか2%程度といわれています。免責不許可事由に該当する場合であっても裁判所の判断で免責が許可されることがほとんどだからです。これを裁量免責といいます。
免責が許可されれば借金は帳消しに?
無事、免責許可が下りれば、借金の返済は免除され、人生の再スタートを切ることができます。
ただし、自己破産をしても支払いが免除されない借金があります。
滞納している税金や健康保険料、わざと他人の財産や権利を侵害したことで請求されている損害賠償や、他人を殴るなどしてケガを負わせたり死亡させたりした場合の損害賠償金、養育費や婚姻費用、従業員の給料や罰金などで、これらは免責を許可されても、支払いは免除されませんので、自己破産後であっても必ず支払わなければなりません。
井上悠一
クラッチ不動産株式会社代表取締役