(写真はイメージです/PIXTA)

相続人には最低限保障された一定の相続割合(遺留分)が法律で定められています。しかし、この遺留分は、被相続人の遺言や生前贈与によって侵害されてしまうことがあります。それでは、遺留分が侵害された場合、誰に何を請求できるのでしょうか? Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が具体的な事例を交えながら解説します。

「遺留分」が「侵害される」典型的な事例

遺留分が侵害される典型的な事例としては、遺言(遺贈)や生前贈与が挙げられます。いきなり、遺言(遺贈)や生前贈与と言われてもよくわからないと思うので、それぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

遺言による相続分の指定など

 

被相続人は、生前に遺言書を作成しておくことで、誰に何をどれだけ相続させるか定めることができます(これを「相続分の指定」と呼びます)。

 

例えば、法定相続人が3人いる場合に、そのうちの1人にだけ全財産を相続させるという旨の遺言をすることができるのです。しかし、そうすると、遺言によって、最低限相続できるはずの遺留分すら相続できなくなってしまう相続人がでてきます。これが、遺言によって遺留分が侵害される典型的な事例です。

 

上記のようなケースでは、遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害している相続人に対して、遺留分侵害額請求を行うことができるのです。遺留分侵害額請求の中身については後ほど解説いたします。

 

遺贈

 

次に遺贈によって遺留分が侵害されるケースをご紹介しましょう。被相続人は遺言によって法定相続人以外の第三者に遺産を贈与することができます(これを「遺贈」と呼びます)。

 

例えば、被相続人が遺言によって法定相続人以外の第三者に全財産を遺贈したとしましょう。この場合、法定相続人は遺贈を受けた人(受遺者)に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。

 

ちなみに、被相続人が死亡することによって効力が生じる贈与のことを死因贈与と言います。遺贈とは若干異なりますが、これも遺留分侵害額請求の対象となります。

 

生前贈与

 

被相続人が亡くなる前に行っていた贈与(いわゆる生前贈与)も、遺留分侵害額請求の対象となります。

 

ただし、法定相続人以外の第三者への生前贈与については、基本的には亡くなる前1年以内の生前贈与のみが対象となります。これに対して、法定相続人への生前贈与については、亡くなる前10年以内の贈与が対象となります(その代わりに、婚姻若しくは養子縁組のためまたは生計の資本として受けた贈与に限られます)。

 

遺留分侵害額請求の意思表示は1年以内に

 

遺留分が侵害された場合には、相続の開始及び遺贈や贈与があったことを知った時から1年以内に遺留分侵害額請求の意思表示を行わなければ時効によって権利が消滅してしまいます。

 

他方、遺留分侵害額請求の意思表示は、具体的な金額まで示して行う必要はありません。そのため、遺留分を侵害される懸念がある場合には、とりあえず遺留分侵害額請求の意思表示を行っておき、その後ゆっくりと、具体的な金額について算定することも可能です。

 

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本記事はAuthense遺言・遺産相続のブログ・コラムを転載したものです。

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