法定相続人以外への遺贈・贈与の問題の場合
被相続人である夫が亡くなり、遺産が2,000万円あったとします。また、法定相続人は、妻と、子である長男と二男の合計3人だったと仮定しましょう[図表5]。
さらに、生前贈与として、被相続人である夫から第三者Aに対して、被相続人である夫が死亡する6ヶ月前に600万円、同様に第三者Bに死亡する2年前に400万円の贈与があったとします。
この事例において、被相続人である夫の遺言で、子である長男に遺産の全てを相続させると定められていた場合を考えてみましょう。
まずは、法定相続分と遺留分を算出します。この事例において、遺留分の対象となる遺産総額は、死亡当時の遺産2,000万円に、被相続人である夫が亡くなる6ヶ月前に贈与された600万円を加えた2,600万円となります。
被相続人である夫が亡くなる1年以上前にされた第三者Bへの贈与400万円については、遺留分侵害額請求の対象とはならないので無視してください。そうすると、妻の遺留分は4分の1ですので、これを金額に換算すると650万円となります。
同様に、子である二男の遺留分は8分の1ですので、これを金額に換算すると325万円となります。
この事例においては、死亡当時の全財産2,000万円を長男が相続することとなり、妻と二男は何も相続できないため、妻の遺留分650万円、二男の遺留分325万円が侵害されていることになります。
では、この事例において、妻と二男は、長男と第三者Aのいずれに対して遺留分侵害額請求を行えばよいのでしょうか? 法律上、このような場合には、生前贈与によって遺留分を侵害しているAよりも、相続によって遺留分を侵害している長男が優先的に遺留分侵害額を負担する旨定められています。
したがって、妻と二男は、長男に対して、妻は650万円を、二男は325万円を請求できることとなります[図表6]。
まとめ
遺留分は、民法において法定相続人に保証された相続分に対する最低限の権利です。ただ、上記の事例でお伝えしたように、遺留分の計算方法はなかなか難しく、また誰に対して、いくら遺留分侵害額を請求できるかというのは法律的な知識がないとわかりません。
また、1年という短い期間制限がある点にも要注意です。自分の遺留分が侵害されているかどうか、侵害されているとしたら、誰に対していくら請求できるのかというのは、ご自身で調査してみることも重要ですが、お悩みの場合には専門家である弁護士の活用をご検討ください。
堅田 勇気
Authense法律事務所 弁護士
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