2022年のインフレ見通し
さて、今年のマーケットの最大のテーマはインフレでした。来年も高いインフレは続くと考えています。
【図表4】は、米国のインフレ率を見ています。【オレンジ】が実績値で、【青】がマーケット・エコノミストによる、来年以降の予想中央値です。これに従うと、インフレ率は、来年の半ばまでは「3%」を超えて、来年の後半から2.5%程度に落ち着きます。
インフレ率が高止まりする背景については、もちろん、半導体や自動車などモノの不足、化石燃料の高騰、物流の停滞などが挙げられます。ただ、物価の基礎は、
②すべての商品やサービスに降りかかってくる賃金の上昇
です。
CPI住居費の上昇
【図表5】をぱっとご覧ください。そうすると【青色のライン】と【オレンジ色のライン】が連動していることが確認いただけると思います。
【青色】は、全米住宅価格指数の伸びで、18ヵ月間、時間を先にずらして表示しています。一方、【オレンジ色】は、CPI・消費者物価指数の一部である「住居費」の伸びです。
すなわち、住宅価格の上昇に遅れて、家賃なども上昇してくることを示しています。家賃は数年単位の固定契約もあるので、契約更改時に不動産価格の上昇が反映されます。この住居費は、CPI全体の33%、食品とエネルギーを除く、いわゆる「コアCPI」の41%を占めますから、今後、インフレ率は底上げされていくはずです。
賃金の上昇
やはり、【図表6】をぱっとご覧ください。今度も【青色のライン】と【オレンジ色のライン】が連動していることがご確認いただけると思います。
【青色】は、米国の求人件数で、12ヵ月間、時間を先にずらして表示しています。一方で【オレンジ色】は、平均時給の伸びです。
現在、アメリカでは過去最高の1,044万件の求人件数があります。これは現在働いている人の7%に相当する求人募集の数です。企業は、労働力不足の影響で、高い賃金やボーナスを出して、労働者を呼び込もうとしています。
この企業の動きに応じるように、(主に)「だったら賃金の高い、別の会社に移ろう」という理由で今働いている企業を辞める自発的離職者【緑色】も444万人にも上り、過去最高です。
今後は、企業どうしの競争で、賃金が上がり、それが物価を押し上げていくと見られます。もちろん、これとは逆のパターンで、すでにインフレ率が6%を超えているわけですから、労働者は物価上昇を受けて、高い賃上げを求めていくということも考えられます。
資産運用について、マクロの視点から述べれば、2022年もインフレ率が高止まりするという前提で、セクターなどを選択していくことが考えられます。
重見 吉徳
フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】