「日本の住宅性能は先進国では最低レベルだ」と聞くと、驚く方も多いのではないでしょうか。欧州では、新築住宅で結露が起こると施工者が責任を問われるといいます。「結露は発生するもの」…と、当然のように思っていた住宅の不便は、実は性能に気をつければ解消されるものなのです。ここでは、住まいるサポート株式会社代表取締役の高橋彰氏が、「性能にこだわった住まいづくり」に必要な知識を紹介・解説していきます。
ドイツの「難民向け住宅」…“日本との違い”に驚愕
◇欧州で「結露」が起こると施工者は責任を問われる‼
私は、3年ほど前に高気密・高断熱の住まいづくりのサポートを行う会社を立ち上げました。そのきっかけとなったのは、5年ほど前にドイツをはじめとした欧州の省エネ住宅等を視察に参加する機会に恵まれたことでした。
視察では、日本との違いに驚くことばかりだったのですが、特にびっくりしたのが、ドイツで建設中だった難民向け住宅の性能でした。
ちょうど、シリアからの難民が欧州に流入している時期で、ドイツでも難民向けの仮設住宅の建設ラッシュでした。建設中だったその中の1棟を見学する機会に恵まれたのですが、その住宅を見て驚きました。
断熱・気密性能がしっかりしているだけでなく、日本では、ごく一部のトップクラスの性能を誇る工務店やハウスメーカーしか使用していないような高性能な木製サッシが使われていたのです。
他国からの難民向けの住宅が、日本ではほとんど見られないような高性能な住宅だったのです。欧州には、たとえ自国民でなくても人間は十分な断熱・気密の住宅に住む権利があり、国はそのような住宅を供給する義務があるという考え方があると聞きました。
一方日本では、東日本大震災の際、仮設住宅の断熱性能が低すぎて、家の中が結露によるカビだらけになり、被災者の方々が喘息やアレルギーを引き起こしていると、その何年か前にニュースになっていました。欧米と日本とでは、住宅性能に対する考え方が根本的に異なるのです。
ちなみに欧州の多くの国では、新築住宅で結露が起こると施工者は責任を問われるそうです。
当社のお客様に「結露の起きない住宅を建てるなんて、可能なんですか?」とよく聞かれますが、断熱・気密性能をきちんと確保すれば、普通の暮らし方をしていて結露が起きるということはなくなります。
我が国では一流といわれるハウスメーカーの住宅でも、冬には結露が起こるのがいまだに当たり前ですから、大きな違いです。
住まいるサポート株式会社 代表取締役
一般社団法人日本エネルギーパス協会 広報室長
神奈川県出身。東京大学修士課程(木造建築コース)修了、同大博士課程在学中。千葉大学工学部建築工学科卒。リクルートビル事業部、UG都市建築、三和総合研究所、日本ERIなどで都市計画コンサルティングや省エネ住宅に関する制度設計等に携わった後、2018年に「結露のない健康・快適な住まいづくり」のサポートを行っている住まいるサポート株式会社を起業。日本でトップクラスの性能を誇る工務店・ハウスメーカーを厳選して提携し、消費者に無料で紹介する「高性能な住まいの相談室」や、デザインと高性能を両立する設計を行う建築家のマッチングサービス等を提供。また、横浜市住宅政策課主催のセミナーや毎日新聞社主催のセミナー等、多数のセミナーに登壇、メディアへの出演など、高性能な住まいづくりに関する情報発信に積極的に取り組んでいる。住まいづくりを考えている方々への情報発信を通して、ひとりでも多くの方が、住宅の性能に関する基礎知識を持ち、他の先進国並みに「結露のない健康・快適な家」を普及させることを目標としている。主な著書に、「元気で賢い子どもが育つ! 病気にならない家」(クローバー出版)、「人生の質を向上させるデザイン性×高性能の住まい: 建築家と創る高気密・高断熱住宅」(ゴマブックス)など。
●高性能な住まいの相談室:https://sml-support.com/lp
●建築家と創る高気密・高断熱住宅:https://sml-support.com/archicon
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