(※写真はイメージです/PIXTA)

2020年5月に金融商品取引法が改正されて誕生した「デジタル証券(ST:Security Token)」は、有価証券の完全なペーパーレス化、従来とは違う技術を持ったシステムによって管理される「インフラ面での進歩版」といえます。そんなデジタル証券のメリット・デメリットについて、One Tap BUY(現PayPay証券)を創業し、現在はHash DasH株式会社取締役の三好美佐子氏が、今もっとも活用が期待されている「不動産デジタル証券(不動産ST)」を例に、REITやクラウドファンディングなど、従来からある競合的な金融商品と比較して考察します。

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デジタル証券は従来の資金調達手段の「いいとこ取り」

資金調達の手段といえば、主に下記の4点が挙げられます。

 

【代表的な4つの資金調達手段】

 

1.IPO=株式の発行・上場

2.STO(Security Token Offering)=デジタル証券の発行

3.クラウドファンディング

4.ICO=新しい暗号資産の発行

 

どれも事業内容を投資家に提示してお金を集める点で共通しています。そして、発行企業側の負担としては、財務や管理体制を定められた上場基準を満たすことや300~400ページにも及ぶ書類の準備などにより1.IPOがもっとも重く、数年がかりで取り組むことになります。

 

逆に、4.ICOは監督官庁がなく企業側の負担は非常に軽くなりますが社会的な信用性も低くなります。

 

また、3.クラウドファンディングは年間に集める金額が1億円未満でなければなりません。

 

このように俯瞰すると、2.STO(デジタル証券の発行)は、金融商品取引法によりIPO同様に守られていながら、発行のための基準はそこまで高くはなく、手続き書類も50~60ページ程度まで軽減されるなど、負担がIPOほどは大きくありません。信用性が高く、発行企業にとって負担が大きすぎない資金調達手段に位置づけられます。

 

では、次に、投資家側から見たデジタル証券のメリットについて、現在もっとも活用が期待されている「不動産デジタル証券(不動産ST)」を例に、競合的な商品と比較する形で確認したいと思います。

REITとの違い:「リアルな不動産投資」に近い投資

REIT(上場不動産投信)は取引所に上場している不動産小口化商品で、株式と同じように買ったり売ったりできる金融商品です。

 

投資対象はひとつの決まった不動産ではなく複数の物件が組入れられており、REITのなかで物件を購入したり売却したりプロによる運用が行われます。

 

イメージとしては、賃貸不動産を運用する会社の株式に投資するといった感じが近いかもしれません。

 

一方、不動産デジタル証券の主流は、特定の決まった物件ひとつを購入して保有し続ける形です。複数物件で運用されるREITは1軒の物件に万一のことがあってもリスクは低減される分散投資効果がありますが、その反面、自分で物件を選ぶことはできず何に投資するか把握しにくいことになります。

 

物件が明確に分かったうえで投資することができる点で、不動産デジタル証券は分かりやすい商品です。

 

また、REITは取引所が開いていればいつでも取引できる利便性がありますが、価格が需給関係で決まるため、金利上昇や大口投資家の売却などの不動産と関係ない理由でも値下がりすることがあります。この点、株価に非常に近いところがあります。

 

一方、不動産デジタル証券は、現状、物件の評価額を基にした価格で取引されるなど不動産そのものとは関係のない要因では値段が動かない仕組みになっています。

 

なお、将来的には、デジタル証券も投資家間で取引できるようになる方向ですが、その場合でも、株式市場とは異なるプラットフォームでの取引で、また、明確なひとつの物件に投資する性質上から物件に由来しない理由では値段は動きにくくなるのではないかと推測されます。

 

決まった物件、自分で選んだ物件を購入して持ち続け、値段も安定している点で、不動産デジタル証券はリアルな不動産投資に近い手触りを持つ投資商品といえます。

 

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