(※写真はイメージです/PIXTA)

2020年5月に金融商品取引法が改正されて誕生した「デジタル証券(ST:Security Token)」は、有価証券の完全なペーパーレス化、従来とは違う技術を持ったシステムによって管理される「インフラ面での進歩版」といえます。そんなデジタル証券のメリット・デメリットについて、One Tap BUY(現PayPay証券)を創業し、現在はHash DasH株式会社取締役の三好美佐子氏が、今もっとも活用が期待されている「不動産デジタル証券(不動産ST)」を例に、REITやクラウドファンディングなど、従来からある競合的な金融商品と比較して考察します。

クラウドファンディングとの違い:「安全性」の水準

クラウドファンディングで販売される不動産小口化商品は、「匿名組合契約」を使ったスキームです。

 

「匿名組合」は一旦購入すると、それを売却(譲渡)することは難しいとされています。それは、匿名組合が営業者と投資家との1対1の契約であり、譲渡については公証役場での確定日付の取得がないと第三者に対抗できないなど手続きが煩雑で、また、これらを簡単にできるシステムもなく譲渡の相手先を見つけることも難しいことなど様々な理由によります。

 

一方で、デジタル証券は、まさにこの部分を解決しようとしたものです。ブロックチェーンは契約を自動的に実行する仕組み(スマートコントラクト)が実装されており、匿名組合の契約に流通性を与えることが使命といっても過言ではありません。

 

また、不動産デジタル証券の方がクラウドファンディングに比べて、安全性の高い部分があります。匿名組合は「不動産物件にそのまま投資」する形と「信託受益権化した不動産に投資」する形の2種類がありますが、クラウドファンディングは多くが前者を採用し、デジタル証券は後者であることが必須です。

 

前者は、匿名組合契約に従って集めたお金で実物不動産を購入し、所有権登記も発行業者に移ったうえで管理・運営していきます。一方、後者は、投資対象となる不動産物件を信託会社に預けます。所有権の登記も信託会社に移り、管理・運営も信託会社が行います。

 

これのメリットは、発行業者が万一倒産した場合でも登記や実際の運営が発行業者にはないので、経済的にその影響を受けない点にあります。

 

加えて、信託会社がこの物件の安全性について厳しい審査をしたうえで受託することも投資家としては安心材料の一つになるでしょう。

 

以上のように、有価証券としての流通性と不動産投資としての価格の安定性、制度としての安全性を兼ね備えたものが「デジタル証券」のメリットとなります。

 

その分、コストがやや高めになることがデメリットといえます。REITほど上場コストはかかりませんが、安全性と透明性を確保するために、定期的な情報開示のために会計監査や不動産鑑定を受け、法律家のレビューも必要になります。

 

それなりのコスト負担が不動産投資の利回り面に影響を及ぼすことになりますが、安心と引き換えには致し方ない部分かもしれません。

 

[図表]不動産デジタル証券と、REIT、クラウドファンディングとの違い
[図表]不動産デジタル証券と、REIT、クラウドファンディングとの違い

 

三好 美佐子

Hash DasH株式会社

取締役

 

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