(画像はイメージです/PIXTA)

夫婦二人が暮らす高級マンションは、資産家のひとり娘である妻が、父親から生前贈与されたもの。ところがある日、夫は黙って自分の両親をマンションに招き入れ、「ここで僕の両親と同居する」といい出しました。妻は拒絶することができるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

夫婦の立場は対等だが、そもそも住居はだれのもの?

高齢化社会になり、親の面倒をだれが見るかは一大問題となっています。

 

本件の太郎さんが、自分の両親と一緒に住んで老後の面倒を見ようとすることはよいことのように思えます。

 

しかし、太郎さんは奥さんであるゆり子さんに黙って、両親との同居を決めてしまったようです。それだけで、夫婦げんかの問題となりそうですが、法律上は、どうなのでしょうか?

 

法律上、夫婦は平等で、夫の決定に従わなければならないということはありません。

 

したがって、「夫である太郎さんが呼び寄せた以上、従うほかない」という選択肢①は誤りです。

 

さて、太郎さんの立場を法的に見てみると、どうなるでしょうか。今回、太郎さんとゆり子さんが住んでいる高級マンションは、ゆり子さんが鈴木さんから生前贈与を受けたゆり子さんのものです。

 

すなわち、マンションの所有権はゆり子さんにあるのです。太郎さんは、ゆり子さんと夫婦であるため同居させてもらっているに過ぎません。

 

そこで、太郎さんは、マンションについてまったく権利がないので、だれを住まわせるかなどについて、まったく決定権はないのです。

 

したがって、太郎さんの承諾があったからといって、太郎さんの両親はマンションに住む権利はありません。

 

よって、「同居人である太郎さんが住むことを承諾している以上、諦めるしかない」とする選択肢②は誤りです。

 

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