「先生、お聞きしたいことがあります」「何ですか」
「先生、お聞きしたいことがあります」「何ですか」「入学できたらアルバイトしてもいいですか」「なぜですか」「人とのコミュニケーションを高め、将来に役立てたいからです」
「こういう逆質問は初めてです……」
面接終了後、校庭に集まった保護者達の前で、B子がおもしろおかしく面接内容を語る姿を見た他校の中学校教師が「逆質問なんて初めてだ! こんな子、見たことない! まるでトットちゃんみたいだ! 天才少女だ!」と叫んだという。
そういえば、B子のお母さんだって、失敗を笑い飛ばすあたり、トットのお母さんのようなおおらかさがある……、と私もそう踏んでいる。
診察室で母親は、こうも話していた。
「この子はウソはつけないので、つい本当のことを言ってしまうのです。今回の面接も苦手なことを言わないようノートを作成して反復練習していたのに、本番では忘れっぽさを強調する面接になってしまいました。話が弾むと、どんどんエスカレートするのでいつもハラハラさせられます……」
高校受験後、IQ検査を行ったところ、中学一年の最悪の体調の時に受けたIQ検査より大幅にアップしていた。
沖縄のトットちゃんは今、新たに高校生活にチャレンジを始めたばかりだ。
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大宜見義夫(おおぎみ よしお)
1939年9月 沖縄県那覇市で生まれる
1964年 名古屋大学医学部卒業
北海道大学医学部大学院に進み小児科学を専攻
1987年 県立南部病院勤務を経ておおぎみクリニックを開設
2010年 おおぎみクリニックを閉院
現在 医療法人八重瀬会同仁病院にて非常勤勤務
医学博士
日本小児科学会専門医 日本心身医学会認定 小児診療「小児科」専門医
日本東洋医学会専門医 日本小児心身医学会認定医
子どものこころ専門医
沖縄エッセイストクラブ会員
著書:「シルクロード爆走記」(朝日新聞社、1976年)
「こどもたちのカルテ」(メディサイエンス社、1985年。同年沖縄タイムス出版文化賞受賞)
「耳ぶくろ ’83年版ベスト・エッセイ集」(日本エッセイスト・クラブ編、文藝春秋、1983年「野次馬人門」が収載)