(※写真はイメージです/PIXTA)

小児科医である大宜見義夫氏の著書『爆走小児科医の人生雑記帳』より一部を抜粋・再編集し、子どもたちとの心の触れ合いを紹介します。

勉強がわからないまま登校…小6になって、急変。

その一方、B子は大の読書好きだ。日に四、五冊、週に何十冊も読みこなす。しかし、読んでも内容を忘れることが多いので同じ本を何回も読み返すこともある。ただ、感動した本は母親の袖をつかまえ止めどもなく感想を述べるので忘れなくて済むらしい。外来で朗読した枕草子のように、興味のある小説の主人公のセリフを朗読させると、プロ並の朗読をして見せてくれた。

 

母親がB子の学力の異変に気づいたのは小学四年の時だった。学習面の遅れ、忘れ物の多さを担任から指摘され、教育委員会の検査を受けたところ、発達障害の可能性を指摘された。小学五年生の時は、担任と相性がよく、個別指導をも受けたこともあって勉強にも力が入り、母親も遅れを取り戻そうと勉強を手伝った。

 

ところが、小学6年生になり次々と異変が出始めた。勉強のわからぬまま登校しているうちに猛烈な過食が始まり、体重が一気に10kg近く増えた。登校の日だけ異常に食欲が増し、給食も待てないくらいの大食いになるが、休みの日は普段の食欲に戻った。

 

登校を続けるうちに、激しい耳痛と耳鳴りを訴えるようにもなった。視力もみるみる悪化していった。これらの訴えが、登校日にひどくなることから登校ストレスに起因していることは明らかだった。

 

中学生になると耳鳴りや耳痛、視力低下はますますひどくなったため、耳鼻科や眼科、精神科や脳外科などあちこちまわり大学病院まで受診したものの原因は不明、検査上は異常なしと言われた。受診先でも深刻な訴えにもかかわらず、明るくひょうきんに振る舞うのでおふざけととらえられた可能性もある。

 

好きな読書も眼前数センチ以内に本を近づけ、極度の前屈み姿勢で読むので耳痛や肩こり、頭痛がひどくなった。

 

本人の話では、人の顔もおぼろげにしか見えないという。まわりがぼやけ、授業中にも黒板が全く見えないのでノートに好きな絵を描いてヒマつぶしをしているようだった。

 

それでもB子は学校を休まなかった。勉強は苦手でも、明るくひょうきんでクラス仲間と笑い合える雰囲気が持てたからだった。ほぼ全教科が苦手となり成績も急落し、美術と体育だけが楽しみとなった。

 

受診から半年後の中学二年三月、不注意や忘れ癖、落ち着きのなさ、おしゃべり、多動を目安にADHDの薬物療法を開始した。

 

服用から二週後、驚くべき変化が起きた。

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※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『爆走小児科医の人生雑記帳』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※「障害」を医学用語としてとらえ、漢字表記としています。

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