(※写真はイメージです/PIXTA)

経済の教科書にある「景気動向を左右する要因」の説明は、少々古くなってきました。景気動向に影響を及ぼす要因は複数あり、過ぎ去ってみないとその正体が判明しないケースも多くあります。日本の経済が「腰折れ」してしまった理由等とあわせながら、経済評論家の塚崎公義氏が景気の動きについて解説します。

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かつて、製造業が経済に占める割合が高かったころは…

景気がよくなったり(回復したり)悪くなったり(後退したり)するのはなぜでしょうか。教科書には在庫循環や設備投資循環といった言葉が出てきますが、これは過去の話ですね。

 

かつて製造業が経済に占めるウエイトが高く、しかも在庫管理技術が未熟であったころには、景気がよくなると皆が一斉に増産し、それが行き過ぎると在庫が過剰になり、過剰在庫を減らすために皆が一斉に減産することで景気が後退したようです。

 

しかし、いまでは経済がサービス化して製造業のウエイトが下がっていますし、在庫管理技術も進歩していますから、在庫が増えすぎたから減産したために景気が悪化した、といったことは考えにくいですね。

 

設備投資についても、かつては景気拡大で一斉に設備投資が盛り上がり、10年後には設備の更新期が来るので一斉に更新投資が盛り上がり、それが景気を変動させた、といったことがあったようです。

 

しかし、最近ではコンピュータ関係のように設備更新のサイクルが短いものも多いので、更新投資が景気を回復させるほど一斉に盛り上がるといったことは考えにくいでしょう。

 

いまでも在庫投資や設備投資は変動しますが、それが景気の方向を変える、というよりは、企業経営者の予想に反して景気が悪化したために在庫や設備が過剰になり、それを減らす必要が生じたので景気の落ち込みが増幅された、といった程度でしょう。

景気が「回復と悪化を繰り返す」要因とは?

在庫循環等が重要でないとすると、景気は自分では方向を変えません。景気が回復してくると、企業は増産のために労働者を雇います。すると、雇われた労働者が給料をもらって物(財およびサービス、以下同様)を買いますから、一層ものがよく売れて、企業がさらに増産する、といった好循環が働くからです。

 

増産のために新しい設備を作る企業が出てくれば、鉄やセメントや設備機械などが売れるでしょう。景気回復期には企業が儲かりますから、設備投資の資金を銀行から借りることも容易でしょう。

 

同様に、景気が悪化を始めると悪循環で景気がさらに悪化していくわけです。生産減→雇用減→所得減→消費減→生産減→設備過剰→設備投資減、といった具合ですね。

 

しかし、景気が無限に回復や悪化を続けることはなく、いつか景気は悪化し、そしてまた回復します。それは、政府日銀が財政金融政策で景気の方向を変えたり、海外の景気変動が輸出等を通じて国内の景気を変動させたりするからです。

 

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