過剰在庫の代表選手はお玉。すべての料理人が求めるお玉を用意したせいで、気づけば0.1㏄から2000㏄まで、取り扱いは1000種類以上に及ぶといいます。プロ料理屋人に広く知られ、海外からお客が訪れるようになった結果は。※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

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飯田屋で取り扱うおろし金は230種類

■そこまで必要? いえ、まだ足りません!

 

現在、飯田屋で取り扱うおろし金は230種類ほど。価格やサイズが違うもの、おろした食材の食感が違うもの、用途も大根、生姜、わさび、チーズ、ナツメグなどさまざまです。

 

経営コンサルタントには「過剰在庫だ!」と言われます。

 

常識的にはそうかもしれません。それでも、楽しそうに商品を選び、喜んでお買い上げくださるお客様の姿を見るたびに、決して間違っていないと確信するのです。

 

むしろ、まだまだ足りません。これだけ種類を揃えても、お客様の要求にお応えできないことは日常茶飯事です。

 

世の中には、まだ知らない食材も、まだ知らない調理法もたくさんあるはずです。お客様のご要望に、いつでも応えられる体制を整えていきたいと奮闘しています。

 

お客様のニーズが具体的な言葉になっていない場合も少なくありません。そんなときは、ニーズに合った最善の道具を導き出すための〝聴く力〞が試されます。

 

0.1㏄から2000㏄まで、取り扱いは1000種類以上に及ぶ。
0.1㏄から2000㏄まで、取り扱いは1000種類以上に及ぶ。

 

「どんな料理をつくる予定ですか?」
「食感の好みは、ふわふわ? ジャキジャキ?」
「味わいの好みは、甘め? 辛め?」
「誰が、誰と、いつ、どんなシーンで使うのですか?」

 

お客様ご自身がまだ気づいていないニーズを、会話を重ねて一緒に見つけ出すのが飯田屋の接客です。だから、時間がかかってもかまわないのです。

 

お玉も過剰在庫の代表選手です。0.1㏄から2000㏄まで、取り扱いは1000種類以上に及びます。うち、5㏄から100㏄までは1㏄単位で常時在庫しています。

 

狭い店内にあるお玉コーナーには、隙間がないほどにびっしり吊り下げてあります。

 

「7㏄のお玉ない?」「12㏄は?」「75㏄は?」「丸い形状の……」「注ぎ口があるもの……」と、とにかく細かなご注文をいただくからです。

 

不思議に思ってお客様に尋ねると、チェーン店の料理人は調味料の配合をお玉で計量しながら調節することがわかりました。「必要な量をすり切れひとさじですくえるお玉があるとたいへん便利」と言うのです。

 

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浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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