新社長に対する社員の目線は、ベテラン社員中心に「しょせん、修羅場を潜ったことのない二代目、お手並み拝見」といった冷たいものだった。※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

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「今に見ていろよ、俺の経営手腕を」の気負い

■「お手並み拝見」ベテラン社員の目

 

2017年7月に中小企業家同友会全国協議会(中同協)の会長に就任した広浜泰久氏の率いるヒロハマは、缶パーツ業界のトップメーカーだが、そこに至るにはやはり「経営指針」成文化がキーとなっている。

 

広浜氏は1974年に慶應義塾大学卒業後、数年間関連メーカーで経験を積み、その後、家業であるヒロハマ(当時は廣濵金属工業。営業部門は広浜商事)に入社。総務、経理関係の部課長、工場長等を経て社長に就任した。

 

就任した90年代初頭の業務用缶パーツ業界は市場が成熟化、極めて厳しい状況に向かいつつあった。「万年業界2位」だったヒロハマにも、危機感が覆いかぶさっていた。しかも新社長に対する社員の目線は、ベテラン社員中心に「しょせん、修羅場を潜ったことのない二代目、お手並み拝見」といった冷たいものだった。

 

このころの広浜氏の心境を忖度すれば、「今に見ていろよ、俺の経営手腕を」という気負ったものだったであろう。結果、検討を重ねたうえでだが、当時の会社の力量にそぐわない背伸びした新規事業への進出を決断する。結果は言うまでもない。数年を経ずして、撤退に追い込まれる。このとき広浜氏は潔く、全社員を前に「大失敗だった。撤退する。申し訳なかった」と頭を下げたという。

 

問題は今後である。新分野が難しいとすれば、残された選択肢は業務用缶のパーツ専業メーカーとしていかに生き抜くかである。悩み、考え込んだが、なかなか回答が見つからない。たまたま所属する千葉同友会船橋支部で経営指針成文化セミナーを立ち上げることになり、広浜氏はその一翼を担うことになった。このことが広浜氏にとっても、ヒロハマにとっても大きな転機になる。

 

そのあたりの経緯については後述することにして、これまで何度か「経営指針」とごく簡単に記してきたが、ここでまず中小企業家同友会における経営指針の骨格をやや詳しく説明しておきたい。

 

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※初出:清丸惠三郎著『小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月11日刊)、肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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