(※写真はイメージです/PIXTA)

世の中には経営者を集めて開催される「セミナー」なるものがある。そこでは一体、どのようなことが話されているのだろうか。ジャーナリストが潜入した。※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

会場にはやや緊張した面持ちの、20代から40代

2018年4月27日午後5時、記者は千葉県の成田空港にほど近い八千代市の市民会館を訪れた。この会館の一室で千葉県中小企業家同友会の「経営指針成文化セミナー」が開かれることになっていたからである。

 

会場にはやや緊張した面持ちの、20代から40代と思しき男女16人に、それより数歳上か、同年輩の、ほぼ同数の男女、それに数人の事務局関係者が姿を見せていた。前者はセミナー受講者であり、後者は経営指針づくりを目指す受講者に様々に問いかけ、問題点があれば気付かせる役割を果たす運営スタッフと呼ばれる人たちである。彼らはやがて、4つのグループに分かれて着席した。

 

運営スタッフの一人が各グループをリードするリーダーとなり、他の運営スタッフはオピニオンなどと呼ばれ、ほぼマンツーマンで受講者を支援する役割を担う。つまり、話が行き詰まったり、受講生の理解が行き届かなかったりしたときに適切なアドバイスをするのが彼らの役目である。

 

受講生はこの日のオリエンテーションを手始めに12月4日の経営指針の発表・修了式まで、足掛け9カ月にわたり8回の講義を受けることになっており、この間の参加費として9万8000円を支払っている。

 

宮城同友会の場合、「経営指針を創る会」と呼び習わしており、発表会なども含め12講座、期間もフォローアップも含め延べ6カ月間と同じだが、各講座一泊を基本として宿泊費、食事代などを含むため22万円とかなりな高額になっている。京都同友会では「人を生かす経営『実践塾』」などと呼称している。

 

そのうえ、これはいずれの同友会の場合でもそうだが、事前に読むべきテキストが決められていて予習が必須であるうえ、毎回の講座終了時に出される宿題は期限内の提出厳守である。遅刻、欠席、早退は認められず、1回でも禁を破ると修了できないことになっている同友会もある。実に厳しいと言っていい。

 

このほか受講者は経営者か、後継者で、かつある期間内に事業を承継することが決まっていることとされる。加えて宮城県のように直近3カ年の決算報告書の提出義務を課すとともに、所属支部の支部長の承認を求める同友会もある。

 

これだけを見ても経営指針成文化セミナーでは、参加者は真面目に、かつ誠実に取り組むこと、会社も自分自身も裸になって立ち向かうこと、さらにそうした覚悟を有する経営者であることが要求されているとわかる。

 

千葉同友会のこの日のセミナーではまず、「なぜ受講を決めたのか」という、割合初歩的とも思われる質問が受講者に向けられた。

 

ある農業法人の代表者は「非常に難しい時代になってきた。これからどういう方向に時代が動いていくのかをここで勉強したい」と語り、ある二世経営者は「近い将来、社長になるに際して、何か一つ経営指針を社員に示したい。そのための勉強をしたい」と答えている。

 

このように参加者の間では、まず勉強するという姿勢が共通して強いことが理解できる。

 

なかには、人材派遣会社を経営し、急激に業績を伸ばしている若手経営者のように、「昨日、同友会大学を卒業したばかり。仲間から(セミナーは)大学よりもだいぶ苦しいぞ。しかし、勉強にはなるから、頑張れと励まされてきた」と意欲的に話す人もいる。

 

ちなみに同友会大学は、同友会会員企業の経営者、社員が、世界経済、日本経済、あるいは中小企業論などを学び、総合的な知識を獲得し、教養ある人材に脱皮するのを支援する同友会独自の教育システムである。北海道などのように幹部社員向けの「同友会大学」、経営者向けには「経営者大学」と呼ぶところもある。

次ページ経営者に問われる「何のために経営していますか?」

※初出:清丸惠三郎著『小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月11日刊)、肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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