東京大学名誉教授で、執筆活動も盛んな医学博士・養老孟司氏。白内障手術での入院中、『ライフスパン』という翻訳本を読んでいました。著者はハーバード大学教授・老化の研究者であるシンクレアで、内容は「簡単な薬を飲むだけで若返りは可能で、寿命はどこまで延ばせるかわからない」というものなのですが…。同氏が「若返りの研究」「新しい科学技術」について解説します。 ※本連載は、書籍『養老先生、病院へ行く』(エクスナレッジ)より一部を抜粋・再編集したものです。

養老先生の中で「ずっと引っかかっていること」

こんなことを言うのは、私がかつてやっていた仕事が老化の問題と無縁ではないからです。

 

山中先生と一緒にノーベル賞を受賞したイギリスのガードンは、カエルの小腸の細胞核をカエルの卵に移植して、おたまじゃくしを作りました。これがクローン動物の始まりですが、ガードンのこの論文が出たのは、私が大学院生のときでした。

 

当時、この論文に感動した記憶があります。私は解剖学をやっていたので、クローンの個体がたくさん欲しかったのです。

 

 

解剖学的な構造がすべて遺伝子で決まるのであれば、クローンの解剖学的な構造もすべて同じになるはずです。そうならない部分があれば、それはエピジェネティック(DNA塩基配列の変化とは独立した機構)といって、遺伝子では直接決まらない部分です。エピジェネティックな部分が身体のどこにどれだけあるのかは、クローンがあれば知ることができるはずです。

 

しかし、当時の東大解剖学教室ではクローン作りはできなかったので、頭の中で考えただけで終わってしまいました。このことは、私の中でずっと引っかかっていることの1つです。

 

 

養老 孟司

東京大学名誉教授

養老先生、病院へ行く

養老先生、病院へ行く

養老 孟司
中川 恵一

エクスナレッジ

あの「あの病院嫌い」の養老先生が入院した!? 自身の大病、そして愛猫「まる」の死に直面した養老先生が、「医療」や「老い」「大切な存在の死」とどう向き合うかなど今の時代のニーズに合致しつつも普遍的かつ多様な書籍で…

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