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日本という「長寿国家」で長生きするためのポイント
日本はテロや内戦とも無縁な平和で住みよい国です。医療も進んでいますし、もともと長生きできる条件がそろっている国なのです。若返りの医療が実用化していけば、ほとんどの国民が100歳くらいまで健康に生きることができる時代が来るのは決して夢ではありません。
老化を止める技術を待たなくても、現時点でいくつかのことを注意するだけで、長生きする人は増えていくでしょう。そのポイントとなるのは、がんで死なないということです。すなわち、がん検診を受けることでリスクが減らせます。
また心筋梗塞や脳梗塞で死なないためには、高血圧や糖尿病、脂質異常症を予防する、なってしまった場合は治療することが大事です。実は私も血圧の薬は飲んでいます。養老先生ほどではないですが(※)、最初は薬を飲むかどうか迷いました。でも血圧が専門の同級生の医師に聞くと、薬は飲んだ方がいいと言うので飲むことにしました。
※ 筆者は養老孟司氏の教え子で、養老氏は「病院嫌い」な医学博士として知られています。
運動するとか、食べすぎないとか、自分でできることは合理的な範囲内でやるべきです。日本は経済的には低迷していますが、相対的に見ればよい国です。世界には長生きできる条件が少ない国や地域もあります。この国で生まれて生きる幸せというのはもっと謳歌してよいと思います。それでこその長生きです。
それでも、避けられない運命もあります。がんなら早期発見の難しい膵臓がんにかかってしまったとか、認知症になってしまったとか。あるいは自分はまったく悪くないのに交通事故で死んでしまうとか。避けられない不幸というものは、生命には必ずついて回ります。
そうしたネガティブな未来ばかりを考えていると、うつになってしまいます。逆に、長生きできるからといって、ずっと先の未来に希望を置くのも不安を呼びます。老いと死が待っているからです。時間は人間を苦しめるのです。
それは大脳を発達させた人間の宿命です。大脳があるから先の時間が気になり、その先にある死を考えてしまうからです。
がんはその典型です。「5年生存率」などの時間に支配される病気です。患者さんは5年たったら「治った」と思いたいのです。5年目の診察の夜は、ほとんどの患者さんが祝杯をあげると言います。