今世紀末には気温が2.4度上昇する見込みに
10月末から11月12日まで、イギリスのグラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催されました。
国連気候変動枠組み条約事務局によると、各国の温室効果ガスの排出削減目標が達成されても、2030年の温室効果ガスの排出量は2010年より16%多くなると発表しています。
そのため参加国が宣言した対策を全て実施して目標を達成したとしても、今世紀末には2.4度気温が上昇する見込みで、温暖化対策は待ったなしです。
今後、再生可能エネルギーの利用がますます促進されることになるでしょう。日本でも風力発電所が増えていますが、その一方で、低周波音による健康被害や環境への悪影響も懸念されています。
風車から発生する「低周波音」。人体に及ぼす影響とは
風車のタワー先端には発電機などを納めた「ナセル」があり、ブレード(回転羽根)とつながっています。風を受けてブレードが回ると、その動きが発電機に伝わって電気を起こします。ナセルからは可聴音が、ブレードからは超低周波音や低周波音が発生します。
人間によく聞こえる音は、周波数1000〜4000Hzで、周波数20Hz以下の超低周波音は聞こえにくいとされています。しかし、周波数が低くても音が強ければ知覚できますし、時計の秒針の音が気になって眠れないなど、音の感じ方には個人差が大きいのです。
低周波音や超低周波音は波長が長いため、数キロメートル離れた場所でも確認でき、広範囲で健康被害を生じる可能性が指摘されています。
低周波音や超低周波音による人体への影響として、心血管系(血圧、心拍数など)の変化や、集中力の欠如、めまい、倦怠感、睡眠障害、鼓膜の圧迫感、振動感などが報告されています。
これまでにも風力発電所周辺に、睡眠障害や頭痛、疲労感などの体調不良を訴える住民が存在することが、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オランダなど各国で報告されてきました。
スウェーデン、ゲーテボルグ大学のエジャ・ペダーソン博士らは、地形や都市化の程度が異なる7か所で疫学調査を実施し、平地よりも山間地など地形が複雑な地域では風車音が気になると訴える率が有意に高くなった(オッズ比4.8倍)と報告しています。山や谷が多く平地が少ない日本でも、地形に配慮して設置したほうがよいのかもしれません。