恐ろしい…もしも以前のクリニックを再診していたら
しかし、残念なことに医療機関で甲状腺機能低下症が見逃され、誤った診断がなされたために、翻弄されることになってしまったのです。高齢になると体の病気でも認知機能が悪くなる、ということを医療機関側が分かっていなかったために起こったと推察されます。
もし、ショートステイの期間が切れたときに当院ではなく、もともとかかっていたメンタルクリニックを再診していたら、ずっとアルツハイマー型認知症として扱われ、進行抑制薬を投与され続けていたかもしれないのです。
当然、薬は効きませんから、母親はずっと認知機能も体調も悪化したまま、自立した生活もできずに命を終えていたかもしれません。そう考えるとこれはかなり深刻な誤診です。
認知症は診断の難しさに対し、診断スキルが必ずしも平準化されておらず、医師によって診断がぶれやすいために、こうした誤診や不十分な診断が多発している実情があります。
磯野 浩
医療法人昭友会 埼玉森林病院 院長