(※写真はイメージです/PIXTA)

医療従事者であれば、患者にとって最良の治療を提供したいと考えるものでしょう。とはいえ「いい治療」のほとんどは自由診療であり、保険診療では最低限の治療しか行えないというのが実情です。費用がネックとなり、自由診療を選べない患者も少なくありません。患者に納得してもらうには、どうすれば良いのでしょうか。

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自由診療を売りにするなら「スタッフの説明力」がカギ

佑健会において、自由診療はもちろん私だけの専売特許ではありません。むしろ分野ごとには、私よりも腕のあるドクターを雇っています。そこは育てるより補強です。その方たちを受け入れるためにも、スタッフの充実が求められます。

 

一人ひとりの成長を促し、さらに彼ら、彼女たちのチームづくりに力を注ぎます。例えば、自分の意見をドクターになかなか言い出しづらい患者さんもいます。性格もありますが、仮に畏怖の念をもっていただいている場合は、なかなか反論はしにくいものです。

 

例えばインプラントを試したいという場合、いろいろ調べてきて、1本20万円くらいと当たりをつけてきたのに、ドクターに相談したところ50万と言われたら、誰でも「高い!」と二の足を踏むでしょう。ところが病院では値切りづらいでしょうし、「もう少し安い方法は?」と聞けたとしても、「もう少し安くなりませんか?」とは言い出せない。

 

自分から「インプラントが試したい」と言い出した手前、それは恥ずかしくて、あるいは沽券にかかわるからと、言い出しにくいというのが大方の人だと思います。

 

そこで私の場合、「インプラントは高いけど、ベストな方法ですよ」とだけ言って席を外してしまいます。

 

そして、残りの説明、どういう選択肢のなかでなぜインプラントがいいのかという話を自分の信頼するスタッフに話してもらうのです。そのために、自分と同じように説明ができる人を事前に育てておきます。そうしたスタッフを何人育てられるかも重要です。

 

スタッフとならば、多くの患者さんが本音を言えます。「高いですよね」とも気軽に言える。そのスタッフが私の代わりに時間を費やしてしっかり説明してくれる。そして最後に、「でも、先生の言っている方法がベストですよ」と説明します。そのあとに私が戻ってくる。そして最後のワンプッシュをすれば決まります。

ドクター直々の説明はせいぜい「10~15分」で十分

自分が1時間使ってでも、しっかりと説明するドクターもいます。自分は、そこまでの時間は必要ないと思っています。人の腹はだいたい5分から10分で決まるものだと思うからです。だから、私が使う時間も10分から15分。早いと5分。その代わり、より詳しい説明をスタッフに任せるわけです。

 

患者さんに説明をして説得するのに1時間必要だとします。その1時間を丸々、自分で費やすのではなく、スタッフに任せて自分は要所で10分で済ませることができれば、計算上、同じ1時間で6人のコンサルティングができることになります。効率的なわけですが、それだけではありません。そのほうが、私がいいだけでなく、患者さんも聞きやすくて分かりやすくて納得しやすいのです。

 

大変なのは、私と同じことを話せるスタッフを仕立てるところです。

 

自分が患者さんを相手にする1時間のなかに例えば衛生士を3人、20分ずつ当て込む。そうすると楽になるという考え方を多くのドクターがします。

 

私は別の考え方をします。もちろんたとえですが、自分の60分を3倍の180分にするのです。錯覚ですが、効率は3倍になります。この場合は自分の1時間を20分で切り上げて、残りの40分をスタッフ(ある意味での自分のコピー)に任せるわけです。3人の衛生士をうまく活用することで、1時間が3時間になる。あるいは自分が3人になるのと同じ効果効率が得られるのです。そういうマネジメントです。

「スタッフの業務拡大」で患者満足度も収益もアップ

これがなぜなかなかできないのか。それは、「だってスタッフじゃないか」という考え方だからなのです。それは違います。資格的にできない業務はもちろんありますけれど、知識を蓄えて、患者さんと話をするという行為は誰でもできるわけです。

 

こういう柔軟な考え方をすれば、ドクターが1人でも、その1人を2人にも3人にもして、それだけ収益を上げることができるのです。

 

そう考えないと、せっかく人を雇っても、自分の仕事が少しも楽にならず、収益も上がらない。給与が増えた分、下手をすれば経営がそれだけ苦しくなってしまいます。そもそも楽をしたいと考えるから間違えてしまいます。

 

さらには、自分が楽になるためではなく、今いる衛生士が大変そうだからもう一人衛生士を雇うということも聞きます。それでは経営はいつまで経っても楽になりません。覚悟のないスタッフは、自分が少し大変だと「もう無理なので、人を増やしてください」というものです。それでは人件費がかさむだけです。

 

自分や衛生士が楽をするためではなく、業容を拡大し、さらに患者さんにより満足してもらうための攻めの雇用であるべきなのです。そのための先行投資はすべきだと思いますが…。

 

それこそが、フォローし合うのではなく掛け算になるチームづくりです。

 

ドクターはだいたい、自分が頑張らなければいけないと思うものです。それはそのとおりですが、拡大するという考え方に立てば、自分の時間がいかに空くかを考え、その空いた時間で楽をするのではなく、別のことを考えるという頭にならなくてはいけないと思っています。

 

 

河野 恭佑

医療法人社団佑健会 理事長

株式会社デンタス 代表取締役社長

 

 

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※本連載は、河野恭佑氏の著書『歯科医院革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

歯科医院革命 大廃業時代の勝ち残り戦略

河野 恭佑

幻冬舎メディアコンサルティング

コンビニエンスストアを1万軒以上も上回る歯科診療所の施設数。 一方で少子化によって患者は年々減少し、過当競争が激化しています。 年間で1600軒もの施設が廃業し、「大廃業時代」といわれる歯科業界で生き残っていく…

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