「中学に入ってから伸びにくい」中高一貫校生の特徴
たしかに連立方程式を知っていれば、つるかめ算の問題なんて一発で解けてしまいます。でも小学生段階ではあえてそのような便利な道具をもっていない状態で、考え方を工夫することによって泥臭く答えにたどり着く訓練をしているのです。
僕はこれをよくドラクエのようなロールプレイングゲームにたとえます。連立方程式は、「魔法の剣」のような強力な武器です。これがあればラスボスも一発で倒せます。
一方、普通の鉄の剣や槍しかもっていない状況でどうやってラスボスを倒すかを考えるのが、つるかめ算なのです。普通の剣や槍でラスボスを倒せるだけの知恵と度胸を身につけたうえで魔法の剣を手にしたのなら、文字どおり鬼に金棒です。
ちなみにつるかめ算の面積図の頭の使い方は、高校で学ぶ微積分の頭の使い方そっくりです。かつて数学専門塾で指導していた経験もある某私立中高一貫校の数学の先生は、「つるかめ算をやった経験のある子どもたちは微積分の理解が早い」と証言します。
普通の武器で強い敵を倒す知恵と度胸を身につけた子どもたちは、次のステージでさらに強い敵を前にしてももうひるむことがないのです。
と、ここまで中学入試問題が単なる暗記で対応できるものではないことを訴えてきましたが、一方である私立中高一貫校の校長は、「パターン学習では対応できないような問題を毎年考えて出題するのですが、それもすぐに解法が編み出されてパターン学習にされてしまう……」と嘆いていました。
出題者がいかに思考力を問う問題を出しても、結局中学受験塾がその解法をパターン化してしまうということです。
パターンを頭にたたき込み、似たような問題をくり返し数多く解いた受験生が高得点をとるというルールになってしまっているのが現実であることは否めません。その部分だけを見た人が「中学受験勉強は無味乾燥な知識の詰め込みである」と言っているのでしょう。
でもやっぱり、「そういうパターン学習に慣れてしまった子どもは中学に入ってから伸びにくい」と中高一貫校の先生たちは口をそろえます。
そこはジレンマです。効率良くパターン学習したほうが得点はとりやすく、志望校合格に近づきやすい。でも、長い目で見たら子どものためにならない……。