4―株式インデックスへの積立投資のリスク
以上のように、一括投資と同様、株式インデックスへの積立投資は金融・経済危機直前という最悪のタイミングから始めても、適切な投資対象を選択すれば高いリターンが見込めるが、株式インデックスの価格変動リスクについても注意する必要がある。
4つの金融・経済危機直前から積立投資した場合、「毎月2万円ずつ増えていく元本に対する時価残高の最低値の比率」と「投資期間に対する元本割れした期間の割合」を図表4で表した。
4つの金融・経済危機直前からスタートした株式インデックスへの積立投資のすべてのケースにおいて、少なくとも一度は時価残高が元本を下回ることがある。例えば、リーマン・ショック直前からだと、各株式インデックスの元本に対する時価残高の最低値の比率は50%~60%台と、半分ぐらいまでに減少した。
投資期間が最も長い日本バブル崩壊直前から投資した場合、米国株式(ナスダック100、S&P500、ダウ平均株価)、先進国株式(MSCIコクサイ、MSCI World)、新興国株式(MSCI EM)と全世界株式(MSCI ACWI)は投資期間が相対的に短いITバブル崩壊やリーマン・ショック直前からよりはリスクが抑えられているが、やはり残高が元本の70%~80%台までに一時的に低下している。
一方、日本株式(TOPIX、日経平均株価)は40%~50%と、他の株式インデックスに比べ下落幅が大きく、元本に対する時価残高の最低値の比率が最も低かった。
続いて、投資期間に対する元本割れした期間の割合も見てみよう。米国株式、先進国株式、新興国株式と全世界株式はITバブル崩壊、リーマン・ショックやコロナ・ショック直前からだと、コロナ・ショック直前からナスダック100に投資した場合を例外として、元本割れ期間が投資期間の1割以上を占めているが、投資期間が最も長い日本バブル崩壊直前からだと1割程度であった。
一方で、日本株式については日本バブル崩壊直前から投資した場合、日本株式への影響が特に大きかったこともあって、日本株式の元本割れ期間の割合が6割前後と、非常に大きかった。このようにリスクを抑制できるはずの積立投資の場合でも、株式インデックスの選択を誤ると、一括投資と同様に長期間にわたって含み損を抱えてしまうリスクがあると認識すべきである。
次に、積立投資が一括投資と比べてリスクがどの程度になるかについても見てみよう。
ごく一部の例外(日本バブル崩壊直前からダウ平均株価やMSCI EM、ITバブル崩壊直前からダウ平均株価に投資する場合)を除いて、元本に対する時価残高の最低値の比率は、積立投資の方が一括投資より大きく、下落リスクは低かったと言える。
元本割れした期間においても、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナ・ショックの直前からだと、積立投資の方が一括投資より投資期間に占める元本割れした期間の割合が少なく、リスクが相対的に小さかったとみられる。
しかし、投資期間が長くなるにつれ、米国株式、先進国株式、新興国株式と全世界株式は元本に対する時価残高の最低値の比率と元本割れした期間の割合について、一括投資が積立投資との差が小さくなる。長期投資をすると、時間の経過とともに積立投資の元本が増えていき、一括で投入した元本に近づくため、リスクが同程度になっていくことが分かる。
ただ、日本株式では様子が多少異なる。日経平均株価へ日本バブル崩壊直前からだと、一括投資であれば元本に対する時価残高の最低値の比率が22.3%であるのに対して、積立投資だと49.6%にまで上昇している。さらに、一括投資だと元本割れした期間が投資期間に対して97.1%を占め、約30年9カ月間にわたって元本割れの状況が継続したが、積立投資だと投資期間に対して61.2%、約19年5カ月間まで元本割れ期間は短くなった。日本株式では積立投資の方が一括投資よりリスクを大きく抑制できていたことが分かる。