(※写真はイメージです/PIXTA)

過去に泥沼離婚した「超一流企業」勤務の男性。元妻はもとより子どもとも疎遠になっていたが、深刻な病気が発覚し「全財産を母へ」との遺言書を残した。財産は、タワマン1室と数百万円の預貯金のみ。死後、元妻は子どもの遺留分を求めてきたが、実はそれ以外に「全額子どもに渡る」資産の存在があった。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が、実例をもとにわかりやすく解説する。

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    大企業勤めだった男性の「想定外の資産」

    亡くなった男性と元配偶者との離婚は、双方が弁護士を立てての泥沼離婚だったと聞いた。男性の側は元配偶者の浪費癖や交友関係の問題を主張し、元配偶者の側は男性のDVを主張していたという。いずれにしても、片方の当事者が鬼籍に入ってしまったいまとなっては、離婚の真相は第三者には知る由もない。

     

    このような経緯もあり、男性の母親ときょうだいは心中穏やかではなかったが、双方の弁護士の元で遺留分の交渉が行われ、概ね財産額の半額の支払いがなされた。

     

    ここまではよくある話かもしれない。

     

    ただ、この遺留分に加え、男性の母親らが想定すらしていなかったことがある。それは男性の「確定拠出年金」だ。

     

    男性が勤めていた企業が大企業だったこともあり、積み立てていた確定拠出型年金の総額は、男性が自身の給与から天引きした積立金とさらに勤務先の会社が加入していた団体生命保険を加えると、優に1,500万円を超える額だった。

     

    確定拠出型年金は、日本国内の数社の金融機関が引き受け先となっている。受取人の優先順位は各社により若干異なるかもしれないが、概ね下記の通りになっているようだ。

     

    第1順位:配偶者(内縁の妻を含むが、内縁関係の疎明資料を求められる)

    第2順位:第1順位が居ない場合、亡くなった方と生計をひとつにしていた子や孫、父母、兄弟姉妹など

    第3順位:第2順位が居ない場合、亡くなった方と生計をひとつにしていた親族(例えば従兄弟など)

    第4順位:生計を同一にしていない相続人(子など、民法の相続順位に近い)

     

    これらは死亡一時金の扱いとなり、相続財産とは切り分けられることが多い。つまり相続財産でない以上、遺言の効力が及ばないのだ。ただし、一定額を超えた額については「相続税」の課税対象ともなるため、税務の世界などでは「みなし相続財産」とも呼ばれる。

     

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