(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症等により、自身での資産管理が難しくなった高齢者の資産を守るためには任意後見契約が有効ですが、制度の周知や理解は進んでいるものの、実際に活用されているケースはまだ多くありません。本記事では、活用することで高い効果を得られたケース例を取り上げながら、制度の概要とメリットを紹介します。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。

親族による「財産使い込み疑い」への対応策

最近、一部の親族による金銭の使い込みを疑われる事案の相談を受けることがあります。仮に、使い込まれている方がすでに認知症などで意思能力がないいようなケースでは、成年後見制度が大変有用なのですが、まだ対象者が高齢なだけでご健在のケースでは、

 

「親族がゆえに厳しくいえない」

「長年なんとなく曖昧にされ、自分より若くて力もある子どもに強くいえない」

 

などのケースも見受けられます。


 
その場合、任意後見契約を前提とした財産管理契約の締結も視野にいれ、ご相談をさせて頂いています。

 

そもそも「任意後見契約」と「法定後見(成年後見人制度)」の区別についてもよく質問を受けますが、この両者の違いについては、記事『認知症気味の父親に「成年後見制度」を活用したいが…〈法定後見〉〈任意後見〉の違いとは?』で説明していますので、ご覧ください。

任意後見契約の「その前」は?

それでは、任意後見契約を結ぶまでは、年老いた身内の財産を管理する方法や制度はないのでしょうか?

 

任意後見の前段階にある契約として「財産管理契約」があります。財産管理契約は任意後見契約同時に設定することが多いです。

 

この場合、

 

▼第1章として財産管理契約

▼第2章として任意後見契約

 

との構成になります。

 

「第2章」の任意後見契約が発行すると同時に、「第1章」の財産管理契約は終了します。第1章の財産管理契約から、第2章の任意後見契約に移行するため、「移行型」などと呼ばれています。

 

任意後見などの受任者を司法書士などの第三者が受任する場合、「第3章」として死後事務委任契約が付随することが多いのも特徴です。


 
参照:日本公証人連合会 「2 任意後見契約」

https://www.koshonin.gr.jp/business/b02


 
【財産管理契約における代理権目録の一例】

 

 

任意後見にしろ、法定後見(一般的な成年後見人)にしろ、成年後見の制度にはさまざまな意見がありますが、親族の一部がお金を使いこんでいる(疑いのある)場面は、大変に有益な手法のひとつであると言えます。

 

次ページ「移行型」任意後見契約が奏功したケース

本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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