東京大学名誉教授で、執筆活動も盛んな医学博士・養老孟司氏。「病院嫌い」の先生は、コロナ禍の2020年6月、悩みながらも実に26年ぶりに東大病院を受診し、中川医師により心筋梗塞を発見されました。しかし病院嫌いは変わらないようです。 ※本連載は、書籍『養老先生、病院へ行く』(エクスナレッジ)より一部を抜粋・再編集したものです。

「タバコと無縁に生きているのに、膀胱がん」

がん予防では禁煙がとても重要だといわれています。中川さんによると、喫煙者は膀胱がんになる確率が2倍になり、肺がんになる確率は5倍になるそうです。それはデータの解釈としては確かでしょう。

 

では1日1箱(20本)タバコを吸う人と、3日で1箱吸う人ではどうなのか。20歳からタバコを吸い始め、40歳でやめて、今60歳の人はどうなのか。タバコとの付き合いは千差万別です。それを1つに丸めて、全体の数値を出して確率を提示しているのが統計データです。

 

 

中川さんはタバコを吸わないのに、膀胱がんになっています。タバコと無縁に生きている人でも、がんにかかることがあるのです。

 

では医療における統計を否定すればよいのかというと、そんなことは不可能です。そう願ったとしても、過去の医療に戻ることはありません。現在、病院に行くというのは、この医療システムに完全に取り込まれてしまうことなのです。これが2020年6月に、病院に行くべきかどうかで悩んだ理由です。

 

 

養老 孟司

東京大学名誉教授

養老先生、病院へ行く

養老先生、病院へ行く

養老 孟司
中川 恵一

エクスナレッジ

あの「あの病院嫌い」の養老先生が入院した!? 自身の大病、そして愛猫「まる」の死に直面した養老先生が、「医療」や「老い」「大切な存在の死」とどう向き合うかなど今の時代のニーズに合致しつつも普遍的かつ多様な書籍で…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録