(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢母は、月20万円の家賃が入る店舗併用住宅で独身の息子と同居。近居の娘家族は、やはり母所有の築古戸建に暮らしながら、母の老後を心配しています。ある日、母が突然娘に「あなたが暮らす家を、あなたに贈与する」といって手続きを促します。しかし、店舗併用住宅のほうは、とっくに息子のものになっており…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

高齢母をこき使い、家賃もひとり占めする兄を許せない

松本さんは、同居の母親を家政婦のように扱ってきた兄が、その後、家賃が入る自宅まで手にするのは納得できないといいます。

 

 

将来の母親の介護も兄に任せられない可能性が高く、松本さんの負担が大きくなるのに、兄は母親のお金を好き勝手に使い、のうのうとしているのが許せません。

 

松本さんはそれを母親に訴えたところ、母親は「自宅の名義を自分に戻して、遺言書を書き直す」といってくれたといいます。将来的には、家賃も兄と半分ずつ分けたいというのが松本さんの考えです。

不動産の名義を戻す方法はあるが、現実的ではなく…

不動産の名義を戻すにはいくつか方法があります。

 

①錯誤:登記をしてほどなくなら、間違って手続きをしたので戻す「錯誤」が使えます。1ヵ月以内程度であれば不自然ではありません。

 

②贈与:兄から母親へ「贈与」することも可能です。その際は贈与税がかかります。

 

③売買:母親が兄から買い取る形となります。

 

しかし、いずれの方法も、現在の名義人である兄の実印、印鑑証明書、権利証(登記情報)が必須のため、兄を抜きに母親の気持ちだけでは手続きできません。

 

松本さんには、母親と兄と一緒に話をしていくように説明しましたが、今までの兄の態度では協力を得られないのではないかということです。

 

筆者からは、将来の母親の介護について、松本さんの貢献を無下にしないよう、家賃から介護料を払ってもらうなど、兄としっかり話し合うよう提案しました。

 

不動産の名義を戻す手続きは可能ではありますが、兄の協力が不可避であり、現実的ではありません。したがって、これからの介護の貢献を対価として支払うようなルール決めをする必要があるといえます。とはいえ、家賃は所有者が受け取ることが原則であり、すでに母親には権利がありません。その点も兄と話し合って理解を得なければなりません。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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