(※写真はイメージです/PIXTA)

地主として広い土地を承継してきた一家。長女は70代後半の父親の相続を心配して対策の術を探るうち、相続税額を知って絶句します。父親の資産は不動産に大きく偏り、納税資金の捻出には、土地の一部売却しか手がありません。しかし、豪奢な自宅が建っている位置が問題となり…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

相続税額を知った父と長女、絶句して固まる

父親の財産は不動産に大きく偏っており、あとは預貯金のみです。自宅敷地と建物の評価は2億4000万円、アパートは4500万円、貸宅地の底地評価は5500万円。預金は300万円程度なので、合計すると約3億4300万円です。建築費の借り入れなどはありません。

 

これで相続税をざっくり計算すると、6500万円もかかってしまいます。

 

金額を聞いた佐々木さん親子は、言葉を失いました。

 

「そんなに、かかるのですか…。いまの預金額では到底支払えないです…」

 

自宅に小規模宅地等の特例が利用できる範囲は330m2。それ以上は減額できる要素がありません。また、庭などの土地は100%評価となるため、相続税は下げられません。

 

このまま相続が発生すれば、自宅を半分売却しなければ納税は不可能です。母親がいれば配偶者の税金軽減措置により納税は半分で済みますが、そもそもそれほどの預金もありません。

 

しかも、自宅は敷地の中心に建っているため、敷地の一部だけを売却するのは困難です。もし納税額が半分程度であれば、アパートを売却して納税に充てられますが、現状では自宅をそのまま維持していくことは難しいといえます。

不動産の建て替えで節税&収益確保、母親の老後を守る

そうなると、自宅を住み替える必要がありますが、そもそも建て替えるための資金がありません。そこで筆者は、まずアパートを売却し、その資金で自宅を解体後、自宅を敷地の半分に寄せて建て直し、残りの敷地にアパートを建てること提案しました。

 

現在は、200坪の土地に収益性のない自宅だけが建っていますが、上記の提案であれば、自宅だけでなく家賃が入るアパートを新築することが可能です。そうすれば、相続時には自宅に小規模宅地等の特例を使えるほか、アパートを建設したことで土地は貸家建付地になり、建築資金を借入するため、相続税も減額できます。

 

この対策であれば、古いアパートは売却するものの、相続税の圧縮と新築アパートの建築による家賃収入確保も実現できます。

 

「これなら母も、住み慣れた土地を離れなくて大丈夫ですね…」

 

佐々木さんは、土地を残しながら節税する方法があるとわかり、ほっとした表情を見せました。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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