(※写真はイメージです/PIXTA)

世界中で人気が爆発した動画アプリ「TikTok」は中国企業で、IT業界の新星。米中対立のなかで「TikTok」はマイクロソフトをはじめとする米企業による買収計画が報じられましたが、そのゆくえは混沌としています。※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

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「トランプ劇場」としてのTikTokの規制

米中対立において争点となっている業種をピックアップし、解説していきます。

 

■SNS(TikTokを中心に)

 

ファーウエイを含む5Gの通信技術はこれから世界中の重要な通信インフラ(ハード面)として広まっており、実際に中国にとってはデジタルシルクロードや一帯一路という国家戦略も相まって、中国企業の国際展開、特に東南アジアなどへ注力している模様です。その一方で、アプリなどソフト面ではどうなのでしょうか。

 

前提として、中国国内ではFacebook、TwitterやGoogle、LINEやWhatsAppなど米国や韓国など他国にて開発したアプリが使用できるわけではないのですが、一方で中国政府は同国内で使用を認めていないTwitterを活用して、同国外交部(日本の外務省同等の機関)からの対外的な発信をしています。

 

またTwitter社も2020年6月に多くの中国政府関連とみられるアカウントを削除、というニュースもあり、報道が正しければ、中国政府も海外SNSの影響力を駆使して対外的な活動をしているようです。

 

そこで米中対立のもう1つの焦点となったのは、中国発の人気動画アプリ「TikTok」です。同アプリは中国のBytedance社(2012年創業の中国IT企業)の傘下で、中国国内でニュースアプリ「今日頭条」や動画アプリ「抖音(トウイン)」を展開し、この国際版に当たるのが、(2017年のmusical.ly社買収後、特に広く展開された)「TikTok」です。

 

ここから話が少し複雑にはなりますが、既に2020年以前からソフト面での米中対立に関する伏線もありました。

 

2020年2月にトランプ政権は米財務省などが管轄する対米外国投資委員会(CFIUS)という、海外企業による米国内の企業買収を審査する機関の権限を強め、外国企業の投資によって「米国民の個人情報に、外国政府か外国人がアクセスできるかどうか」を審査項目に加えました。

 

その影響と米中対立の流れから、同年3月にトランプ政権は、中国IT企業である、北京中長石基信息技術に対し、宿泊者の情報が中国当局に渡るリスクを警戒し、同社が2018年に買収した米国のホテル向け情報サービス「ステインタッチ」を売却するよう命じました。

 

加えて、中国ゲーム会社の北京崑崙万維科技も2019年3月のCFIUSの命令により、同社が2016年に買収した世界最大のLGBTソーシャルアプリ『Grindr(グラインダー)』を米国の投資会社、『San Vicente Acquisition(サン・ヴィセンテ・アクイジション)』に売却しました。同性愛者が多く使う同アプリユーザーの位置情報からメッセージ、さらに性的嗜好やエイズウイルス(HIV)感染状況などにかかわる極めて重要な個人情報を蓄積し、それをユーザーに同意もなく第三者に引き渡していたことを、CFIUSが問題視したため、だそうです。

 

次ページ中国側の対抗措置で、事態はさらに複雑に
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