「あなたの仕事を図解してください」と指示されると一瞬戸惑うサラリーマンが多いという。50代からの人生戦略を立て、ライフデザインを描くための練習の一環だが、さまざまなことを発見するという。※本連載は、久恒啓一氏の著書『50歳からの人生戦略は「図」で考える』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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あなたの仕事を「図解」してください

図解思考の説明に続いて、図の描き方の基本について述べましょう。

 

「あなたの仕事を図解してください」

 

私は、官公庁や企業でビジネスパーソンや公務員を対象に、「自分の仕事図をつくる」というテーマの図解研修を数百回担当してきました。参加者全員に、自分の仕事を図解するという課題に取り組んでもらうのです。

 

最初に少し考えてみてください。あなたは自分の仕事を図解できそうですか。

 

自分の仕事は自分自身が一番よくわかっているはずです。ところが、受講者は最初は簡単だと思って、いざ図を描こうとした途端、はたと行き詰まってしまう。うまく表現できない自分に気づく。私が「毎日している仕事だから簡単でしょ」と聞くと、失笑が漏れる始末です。

 

それが、30分も経つと、図解に没頭している自分がいる。自分は仕事の全体像をつかんでいなかった。毎日の業務を意識的には遂行してこなかった。仕事に対していかに自分がよく理解していなかったか、関係部署との関係がうまくいっていなかったか、顧客や社会への意識が欠如していたか…等々、一つひとつ考え抜いている自分に気がつくのです。

 

それがこれまでこの研修を受講した方々に共通する反応でした。

 

本稿のテーマは、壮年期に向けた人生戦略を立て、ライフデザインを描くため、人生鳥瞰図を作成して、自分の来し方行く末を明らかにすることですが、まずは、自分の仕事の図を描いてみることから始めたいと思います。その過程で、図の描き方の基本を学びながら、「個」としての自分をはじめ、さまざまなことを発見していくはずです。

 

仕事の図を描くための基本を説明します。

 

用意するのは、A4サイズの用紙と鉛筆、消しゴムです。パソコンを使う場合もありますが、手描きのほうが思いどおりに描けます。パソコンのほうが見かけはきれいな図が描けますが、スペースのなかに収めるために文字数が制限され、それに合わせるため、短く箇条書きにしてしまいがちで、箇条書き信仰が頭をもたげてしまいます。

 

鉛筆を使うのは、描いては消し、また描いては直しと繰り返し、少しずつ進化させることができるからです。濃いめの鉛筆がおすすめで、消しゴムも必需品です。

 

用紙は横向きにします。横向きのほうが空間が広く感じられ、思考も自由に広がりやすくなります。仕事図の場合、縦向きにすると、上から下へ、あるいは下から上への一方的な流れしか描けなくなり、思考が縮こまる恐れもあります。基本は横向きがお勧めです。

 

研修では、各自、「私」を真ん中に置いて考えてもらいます。つまり、世界の中心が自分であると考えて図に取り組んでもらうのです。

 

組織の一員、会社の歯車、上司の引き立て役ではなく、すべてにおいて自分を中心に置いて考えてみる。仕事図においては、“ジコチュウ(自己中)”でいいのです。碁でいえば、天元に自分を打つのです。

 

すると、「自分から見たら、課の仕事はこうなっている。こう見える」「会社はこう見える」「世の中とこうつながっている」…等々、自分と周囲、さらには世の中の動きとの関係性が見えてくる。そうなると、仕事の図解は俄然面白くなってきます。

 

仕事とは、世の中と自分とをつなぐ仲立ちをしてくれるものであり、仕事の図解とは、自分の位置から世の中はどう見えるかを描くものにほかなりません。

 

反対に悪い例としてありがちなのは、会社の組織図を描いて、自分の位置を示すパターンです。「○○会社××事業本部△△部□□課主任」といった名刺の肩書きが示す組織図をそのまま描いて、自分の部署をマルで囲んで「私の仕事」にしてしまう。

 

これでは、絵に描いたような「組織の歯車」です。

 

組織とは、組織図と業務分掌で成り立っていると考えがちですが、けっしてそうではありません。組織とは、社員一人ひとりの「私の仕事」の集大成なのです。そこには、活き活きとした「個」の息づく世界があります。同じ組織、同じ肩書きであっても、別な人が描けば、仕事図も違ってくるはずなのです。

 

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50歳からの人生戦略は「図」で考える

50歳からの人生戦略は「図」で考える

久恒 啓一

プレジデント社

「人生鳥瞰図」で仕事も人生もうまくいく! 大人のためのキャリアデザインの教科書。 私は日本人の「アタマの革命(図解)」と「ココロの革命(遅咲きの人物伝)」の二つをライフワークとしている──。 こう語るのは、…

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