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仕事を通じてわかった図解の威力
私のビジネスマン時代、図解の効果を実感するに至ったいきさつをお話ししましょう。
ビジネスにおける仕事とは、すべてコミュニケーション活動で成り立っている。それが、私が仕事をとおして導き出した結論でした。
メーカーを例にとっても、まず、開発部門は顧客のニーズや声を聞いて製品を開発します。
製造部門は関係各部門との調整が不可欠です。購買部門は取引先とのコミュニケーション活動抜きには仕事ができません。宣伝・広報は文字通り、コミュニケーション活動が仕事です。人事部門は社内の人材と人に付随する情報をタテ・ヨコ・ナナメに流動化させるためのコミュニケーション活動を行うセクションです。その他の間接部門も「社内顧客」とのコミュニケーション活動によって業務が成り立ちます。経営者は社内におけるコミュニケーションによって情報がうまく対流しているかどうかを常に点検し、整備するためのコミュニケーション活動を行っているともいえます。
では、そのコミュニケーションのツールはといえば、やはり文章が中心の“文章地獄”の世界でした。文章地獄という極端な表現をしたのは、私自身、上司との間で不毛な「てにをは論争」を繰り広げる日々を余儀なくされたからです。
私が作成する文書について上司は、「て・に・を・は」の使い方から句読点の打ち方まで、直しを入れようとする。上司は、部下の書いた文章に直しを入れることが自分の役割であると思っている。文章の内容についての本質的な議論はない。決裁の権限は上司が持っているので、従わざるをえない。どの部署に異動しても、同じような上司がいて、その繰り返しです。
こんなに生産性の低いままでいいのかと、疑問を抱き続けました。
そこで、文章ではなく、図解を使ってはどうかと思いついたのは、三〇代前半でした。ある部門の人員計画から労務までを担当する部署です。
労使交渉で会社側の末席に連なる立場になりました。
当時、この部門は二つの組合がありました。経営側と対立路線をとるA組合と協調路線のB組合です。二つの組合とそれぞれ交渉して労働条件を決めていくのは心労が多く、実に忍耐のいる仕事でした。私はたちまち、修羅場に放り込まれたような状態に陥りました。
労使交渉の相手となる各組合の委員長は、会社の経営のこともよく勉強して知っています。