(※写真はイメージです/PIXTA)

OECDの調査によると、日本でうつ状態にある人は2013年から2020年にかけて2.2倍に増加しています。決して他人事ではないうつ病。ここでは、医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏が、精神疾患のある患者を取り巻いてきた歴史や、現在の治療・サポートについて解説していきます。

「デイケアに来ても眠そう」と連絡があれば…

例えば、1つ目のグループ、ハイリスク群の患者の場合、慢性期であれば外来は4週に1度ということも一般的ですが、その間に急に病状が悪化することも少なくありません。

 

こうした場合、外来と外来の間に1回でも2回でもいいので訪問看護が入れば、再入院になる前に担当医に連絡して受診を促すことができます。また、家族の代わりに服薬を指導して、本人が飲みやすいよう薬をセットしておくといったサポートもできるので、それだけでも再入院を食い止める効果は期待できます。

 

ほかにも、日中の6時間程度を過ごすデイケアは、診察室ではうかがい知ることができない日常の様子をスタッフが観察できます。

 

例えば、「デイケアに来ても眠そうにしている」と担当医に連絡があると、睡眠薬や眠気を引き起こす副作用がある薬が効き過ぎているのかもしれないと推測できます。医師が薬を調整することで回復が進み、早期の社会復帰が期待できます。

 

こうしたことは必ずしも外来で本人が申告してくれるとは限らないため、地域スタッフからの報告が重要な役割を担うことになります。

 

また、精神科の患者は薬の量が多く、依存しがちにもなるので、調剤薬局も重要な存在です。

 

漫然と処方されているけれど実はもう飲んでいない頓服があったり、薬の飲み方に対する疑問や不安を抱えていたり、診察のときに医師に薬の相談をしようと思っていたのに言い忘れてしまった、という患者は多いので、こうした点をきめ細かくサポートしてくれることが期待されます。

 

医師が診察室で患者と会うのは多くても週に1回、頻度が少ない患者であれば3ヵ月に1回程度ですから、そこから取得できる情報はかなり限定されてしまいます。日中の様子を見てくれるデイケアのスタッフや、自宅での様子を見てくれる訪問看護師にしか気づけないことはたくさんあります。

 

そこで得られる情報は適切な医療を適切なタイミングで提供し、患者の早期の自立と社会復帰を促すうえでは欠かせない力となります。

 

 

小椋 哲

医療法人瑞枝会クリニック 院長

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

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