世界的な「供給不足」による混乱 その背景とマーケットの反応は? (※画像はイメージです/PIXTA)

ベトナムにおける厳格なロックダウンや、中国や米国における港湾のボトルネック等によって、世界的な供給不足が発生している。一方、先進国株式市場では供給不足の解消を示唆する好材料をきっかけに回復基調となっているが、業績への影響はむしろ今後発表される決算で明らかになるため、供給不足問題が株価に十分織り込まれたかどうか慎重に判断していくことが肝要だ。

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ワクチン格差が生んだサプライ・チェーンの混乱

先進国を中心に新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、経済の正常化が着々と進展する中、グローバルなサプライ・チェーン(供給網)に大きな混乱が生じている。スポーツウェア業界では、ベトナムの工場に生産を依存するナイキやアディダスなどが、在庫不足による業績への悪影響について警鐘を鳴らす。

 

ベトナムでは新型コロナウイルスのワクチン接種が大幅に遅れる中、デルタ型変異ウイルスの感染が拡大したため、今年7月から厳格なロックダウンが実施されていた。10月1日からはロックダウンが段階的に解除されているが、生産への影響は甚大で物流網の停滞も長引くことが指摘されている。

 

ベトナムのワクチン接種(完了)率は7月1日時点で0.21%、10月14日時点でも17.5%に過ぎない。ベトナムを今年8月に訪問したカラマ・ハリス米副大統領は、新型コロナワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的な枠組みである「COVAX」を通じて供与した500万回分に加えて、さらに100万回分のファイザー製ワクチンの無償提供や2300万ドルの緊急支援策などを発表した。

 

経済正常化を成し遂げるには、途上国を含めたグローバルな新型コロナワクチンの普及が欠かせないことはかねてから指摘されていたが、感染症のみならず国境を越えたサプライ・チェーンの寸断が世界経済に影響を及ぼす事態は想定外だったのではないだろうか。実際、国際通貨基金(IMF)は10月12日、新型コロナウイルスの感染拡大による供給制約等を理由に世界経済の21年実質GDP成長率予測を前年比+5.9%とし、前回7月時点の同+6.0%から0.1%ポイント下方修正した。

供給不足は港湾のボトルネックも影響

一連の供給不足は何も途上国における工場の操業停止のみに起因するものではない。世界の主要なコンテナ港である中国の寧波港や塩田港では今夏、わずか数名の港湾作業員の新型コロナ感染によってターミナル全体の操業を一時的に停止させるなど厳格な感染対策が行われており、グローバルなコンテナ輸送に大幅な遅延が生じている。

 

米国に運ばれるコンテナ全体のおよそ4割を扱うロサンゼルス港やロングビーチ港では両港の外で立ち往生するコンテナ船の停泊が増加、港湾作業員やトラック運転手の人出不足も相まって、現在でも目詰まりが起こっている。これを受けて、米小売大手のウォルマートやターゲット、ホームデポなどは、安定供給のため貨物船を直接チャーターするなど異例の対応を行っている。

 

また、米バイデン政権は10月13日、24時間・休日無しの運営に9月半ばから切り替えたロングビーチ港に加え、ロサンゼルス港も同様の運営方式に切り替えるとしたほか、国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)も時間外労働を行うことで米政府と合意したことを発表した。さらに、ウォルマート、UPS、FedEx、サムスン電子、ホームデポ、ターゲットの6社は、夜間や休日の港の利用時間を増やすことによってボトルネック解消に協力することを同時に発表した。

マーケットは将来的な供給不足の解消を示唆する好材料に対して素直に反応

前述したベトナムにおける段階的なロックダウンの解除や米バイデン政権による港湾対策、さらにはJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが10月11日の国際金融協会(IIF)の会合で「供給網の混乱は来年にはまったく問題にはならない」と発言したことなどから、先進国株式市場では供給不足に対する警戒感が後退しつつあり、株価も回復基調となっている。

 

上海発ロサンゼルス向けの40フィートコンテナ1個当たりの運賃も、9月16日-23日のピークから直近10月14日時点では12.3%下落しており、マーケットは素直に好材料に反応したと言える(図表)。しかし、企業業績への影響はむしろこれから本格化する企業決算で明らかになることであり、供給不足問題が株価に十分織り込まれたかどうか慎重に判断していく必要があるだろう。

 

週次、単位:ドル、期間:2017年10月12日~2021年10月14日  出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表]WCI上海発ロサンゼルス向け40フィートコンテナ1個当たりの運賃 週次、単位:ドル、期間:2017年10月12日~2021年10月14日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

 

※個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『世界的な「供給不足」による混乱 その背景とマーケットの反応は?』を参照)。

 

(2021年10月18日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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連載PICTETマーケットレポート・Deep Insight

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