(※写真はイメージです/PIXTA)

加齢に伴い、ひざの痛みを訴える人が増えていきます。最も多い原因は「変形性膝関節症」といって、膝関節の軟骨がすり減っていき、膝関節がしだいに変形していく病気です。ひざの痛みと聞くと「年齢のせい」と思われがちですが、実は若い頃にひざを酷使した結果、中高年以降のひざ痛に繋がってしまうケースも少なくありません。スポーツなどで起こる「半月板損傷」はその典型例です。将来「寝たきり」にならないためにも、治療方法を押さえておきましょう。

「ひざの再生医療」は2種類

もともと整形外科では、人工関節や骨の移植などによって機能を取り戻す再生・再建の治療が行われてきました。このような標準的な治療に加えて、近年は再生医療による根治に向けた治療への期待が高まっています。

 

整形外科で行われている再生医療は、主に「自分の血液を用いた治療」と「細胞を移植する治療」の2つに分けられます。

自分の血液を用いる「PRP療法」

■大谷翔平選手や田中将大選手…スポーツ選手も受けた期待の治療法

血液を採取してしばらく置いておくと、比重の違いから3つの層に分かれます。一番下には赤い色をした赤血球の層、その上には透明な白血球と血小板の層、一番上には淡黄色をした血漿(けっしょう)の層ができます。このうち再生医療に用いるのは、1%に満たない真ん中の薄い層にある白血球を含んだ血小板で、PRP(多血小板血漿)と呼ばれている部分になります。

 

私たちがケガをして出血しても、しばらくすると血が固まって出血は止まります。これは血小板に止血する働きがあるからです。とても大事な作用ですが、ほかにも血小板には組織の修復を促す成長因子を出す働きもあるのです。

 

成長因子とは、特定の細胞の成長や増殖を促進するタンパク質の総称で、傷を治したり新陳代謝を促したりと、さまざまな役割を果たしています。この作用を再生医療に活用して損傷した組織を修復し、炎症や痛みを改善するのが「PRP療法」です。

 

これは、患者さんの血液から血小板を多く含んだPRPを抽出し、患部に注射するという方法です。

 

この治療は当初欧米でさまざまな運動器疾患に対して行われていました。特にスポーツ選手において良好な治療成績を上げており、メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手や日本球界に復帰したマー君こと田中将大選手も、肘の靭帯にPRP療法を行ったことが報道され、日本でも注目されるようになりました。このような結果から、変形性膝関節症に対しての効果も期待できるとしてPRP療法が治療に用いられるようになったのです。

■医療機関によって「できるPRP療法」と「できないPRP療法」がある

PRP療法には抽出する成分によって、白血球をあまり含んでいない「LP-PRP」(Lは“白血球”を意味するルーコサイト、Pは“少ない”を意味するプア)、白血球を豊富に含んだ「LR-PRP」(Rは“多い”を意味するリッチ)、PRPをさらに濃縮させて特別な成分を高濃度に含んだ「APS」(自己タンパク質溶液)などがあります。これらは液状のため保存期間が短いうえ、成分に細胞が含まれているので再生医療法により認められた医療機関でしか取り扱えません。

 

これらに対して細胞成分を含まず成長因子のみを抽出し、凍結乾燥(フリーズドライ)した「PFC-FD」(血小板由来因子濃縮物)というものもあります。フリーズドライというと、味噌汁などを思い浮かべると思いますが、まさにその技術を用いています。これはパウダー状のため保存期間が長く、細胞を含んでいませんので医療機関にとって再生医療法の申請も必要ありません。

 

このように、PRP療法にもいくつかの種類があり、どれを使用するかは患者さんの症状や医師の診療方針によって異なります。私は、主にPFC-FDとAPSを使用しています。

次ページ細胞を移植する治療法

※本連載は、松田芳和氏の著書『ひざ革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

松田 芳和

幻冬舎メディアコンサルティング

ひざ痛の予防から再生医療まで。 人生100年時代を豊かに生きるための「ひざ寿命」の延ばし方を徹底解説。 昨今、「健康寿命」の重要性が問われています。 人生100年時代といわれて久しいですが、その生活の質を左右す…

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