(※写真はイメージです/PIXTA)

加齢に伴い、ひざの痛みを訴える人が増えていきます。最も多い原因は「変形性膝関節症」といって、膝関節の軟骨がすり減っていき、膝関節がしだいに変形していく病気です。ひざの痛みと聞くと「年齢のせい」と思われがちですが、実は若い頃にひざを酷使した結果、中高年以降のひざ痛に繋がってしまうケースも少なくありません。スポーツなどで起こる「半月板損傷」はその典型例です。将来「寝たきり」にならないためにも、治療方法を押さえておきましょう。

細胞を移植する「細胞移植治療」

■本来、すり減ったひざ軟骨は元通りにならないが…

PRP療法が血液から成分を抽出するのに対し、患者さんの脂肪から幹細胞を抽出して培養し、それを患者さんのひざに移植することですり減った軟骨組織の再生を図る方法が「細胞移植治療」です。

 

私たちの体は約37兆個の細胞で構成されていますが、細胞にも寿命があって絶えず新しい細胞と入れ替わっています。分かりやすいところでは、皮膚を擦るとアカが出ますが、これも古くなってはがれ落ちた細胞というわけです。

 

古い細胞がはがれ落ちたら当然、その分新しい細胞をつくって補充する必要があります。その役割を担っているのが幹細胞です。

 

幹細胞には、分化能(皮膚、血液、神経、血管、骨、筋肉などの細胞をつくり出す能力)と、自己複製能(自らと同じ能力をもつ細胞に分裂することができる能力)の2つの能力が備わっています。分かりやすい例えでいうなら、分化能は変身の術、自己複製能は分身の術といえます。

 

幹細胞による再生医療には、「ES細胞」や「iPS細胞」など体のどのような臓器の細胞でもつくり出せる細胞(多能性幹細胞)を使った方法と、骨、軟骨、脂肪細胞などいくつかの異なった組織や臓器に分化する能力をもった「間葉系(かんようけい)幹細胞」を使った方法があります。

 

多能性幹細胞を使った再生医療は臨床研究が進んでいるものの、倫理的な問題や拒絶反応、細胞のがん化の危険性などの課題が残っており、まだ実用化には至っていないのが現状です。

 

変形性膝関節症の治療で実用化されているのは、間葉系幹細胞による再生医療です。技術的にいろいろな方法があります。私が治療に用いているのは、脂肪を採取し、そこから幹細胞を抽出して培養する「ASC(脂肪由来細胞)治療」で、私のクリニックでは、2020年11月から開始しています。

 

間葉系幹細胞は骨髄由来の非造血系の細胞ですが、骨髄のみならず脂肪や骨膜などからも比較的容易に取り出せるのが特徴です。しかも、これらの細胞は骨芽(こつが)細胞や脂肪細胞だけではなく、軟骨細胞、筋細胞、神経細胞にも分化する能力をもっています。

 

 

松田 芳和

まつだ整形外科クリニック 院長

 

 

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※本連載は、松田芳和氏の著書『ひざ革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

松田 芳和

幻冬舎メディアコンサルティング

ひざ痛の予防から再生医療まで。 人生100年時代を豊かに生きるための「ひざ寿命」の延ばし方を徹底解説。 昨今、「健康寿命」の重要性が問われています。 人生100年時代といわれて久しいですが、その生活の質を左右す…

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