欧州天然ガス価格の上昇とその影響 (※写真はイメージです/PIXTA)

世界的にエネルギー不足が懸念される中、欧州の天然ガス価格の高騰に注目が集まっています。欧州の天然ガス価格が上昇した背景として、供給不安、気候変動などに伴う貯蔵不足、エネルギー転換政策などが指摘されています。欧州の天然ガス価格はインフレ率との連動から金融政策への影響も想定されます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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欧州天然ガス価格:上昇傾向が続いた天然ガス価格はロシアの安定供給発言で下落

ロシアのプーチン大統領は2021年10月6日に開催されたエネルギー関連の会議で天然ガスの新パイプライン「ノルドストリーム2」について、早期操業に取り組む考えを示唆するなど天然ガスの供給に前向きの姿勢を示しました。

 

プーチン大統領が市場安定化の姿勢を示したことなどを受け、欧州の天然ガス価格の指標となるオランダTTFの先物価格は同日乱高下しました。世界的に深刻化するエネルギー不足への懸念から上昇して始まり、一時前日比で40%余り急騰しましたが、終盤にかけ下落に転じ、結局前日価格を7%程度下回る水準となりました(図表1参照)。

 

日次、期間:2017年8月31日~2021年10月6日、インフレ率は月次 ※ユーロ圏インフレ率:ユーロ圏消費者物価指数(HICP) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ユーロ圏のインフレ率と天然ガス先物価格の推移 日次、期間:2017年8月31日~2021年10月6日、インフレ率は月次
※ユーロ圏インフレ率:ユーロ圏消費者物価指数(HICP)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:天然ガス価格、ノルドストリーム2、貯蔵率

世界的にエネルギー不足が懸念される中、欧州の天然ガス価格の高騰に注目が集まっています。欧州の天然ガス価格が上昇した背景として、供給不安、気候変動などに伴う貯蔵不足、エネルギー転換政策などが指摘されています。欧州の天然ガス価格はインフレ率との連動から金融政策への影響も想定されます。

 

欧州の天然ガスが上昇した主な要因を整理します。

 

まず、供給不安があげられます。具体的には欧州が供給を依存するロシアからの供給不安です。注目されるのはロシアとドイツを結ぶ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム2」による天然ガスの供給です。6日にプーチン大統領が安定供給に言及したことで天然ガス価格が下がったのは、裏を返せばロシアからの供給に不安があったということです。報道などでは懸念を口にする欧州の高官もいました。

 

なお、ドイツ当局が9月半ばにノルドストリーム2がエネルギーの供給の安全性について調査が必要としたことで供給開始の遅れを想定させた可能性もあります。いずれにせよ、ノルドストリーム2の今後の稼働状況が天然ガス価格の動向に影響を及ぼしそうです。

 

次に欧州の天然ガス貯蔵率が例年に比べ低水準なことも(図表2参照)、天然ガス購入意欲を押し上げた可能性があります。

 

日次、期間:2020年10月7日~2021年10月5日 出所:ガス業界団体(GIE)のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]欧州の天然ガス貯蔵率の推移 日次、期間:2020年10月7日~2021年10月5日
出所:ガス業界団体(GIE)のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

欧州の天然ガスの貯蔵率の典型的な推移はこれから暖房需要が高まるこの時期にピークとなるのが通常です。昨年のこの時期は9割を上回っていました。暖房の使用に伴い貯蔵率は35%前後に低下し、その後冬に向け貯蔵率を増やすのが典型的なパターンです。ただ、今年は春先の欧州での寒波の影響で低水準の貯蔵率が続きました。足元の貯蔵率も8割に至らず、例年に比べ低水準です。購入需要の根強さの背景と見られます。

 

エネルギー政策の転換で、石炭よりクリーンな天然ガス需要が高まっていることも価格高騰の背景です。

 

これまでに述べてきた欧州の天然ガス価格の上昇要因を考えると、現在の取引価格が適正なのかは、判断に迷うところです。このような場合、価格動向のみに目を奪われるよりも、変動の要因を見極める姿勢が大切と考えます。

 

欧州では暖房などのエネルギーとして天然ガスに依存しているケースが多く、エネルギー価格の上昇によるインフレ率の押し上げも懸念されます。欧州中央銀行(ECB)は金融緩和姿勢を維持する構えです。しかし東欧の中央銀行はハンガリー、チェコなど東欧の中央銀行は既に利上げをしています。6日には市場のほぼすべてが据置を予想していたポーランド中銀が0.5%へと利上げしました。声明文にはエネルギー価格上昇への懸念を表明しています。他国への波及が注目されます。

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『欧州天然ガス価格の上昇とその影響』を参照)。

 

(2021年10月7日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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