(※画像はイメージです/PIXTA)

出張や旅行等の宿泊先で貴重品を壊されてた、盗難に遭った…という話を聞くことがあります。そのような状況において、宿泊施設と所有者のどちらに責任があるのかを明確にすることは、補償の面から非常に重要です。ホテル・旅館をはじめとした宿泊業を専門分野とする、弁護士法人横浜パートナー法律事務所の佐山洸二郎弁護士が解説します。

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客とホテルの間には「宿泊契約」が成立しているが…

宿泊先のホテルや旅館で、フロントやクロークに荷物を一時預かりしてもらうことはよくあります。しかし、もしそこで荷物が傷付けられた、紛失された…という状況になったら、法律上はどのような扱いとなるのでしょうか?

 

とくに問題となるのが、財布や高価品などの貴重品の場合でしょう。ホテル・旅館がお客様に宿泊いただく際、そこには「宿泊契約」が成立しています。そして、ホテル・旅館がお客様の荷物を一時的に預かる場合は、宿泊契約とは別に「寄託契約」が成立することになります(「寄託」とは、物を預けることをいいます)。

 

このように、厳密に考えると、宿泊契約と寄託契約は、それぞれ別に成立することになるのです。

法律上の取扱いは「貴重品かどうか」で異なってくる

預けた荷物の法律上の取扱いは、通常品か貴重品かで異なります。

 

通常品か貴重品かの区別は明確に存在しているわけではないですが、主に財布、宝石類や高価な衣服などを指すことが多いです。

 

そして、ホテル・旅館側では、荷物を預かる際に「貴重品かどうか」の確認をすることが多く、その際貴重品であるという申告がなされた場合、法律上の取扱いが変わるのです。とくに貴重品の申告がない場合、通常品として取り扱われます。

 

 ●通常品の場合 

 

ホテル・旅館が預かっている通常品については、盗難や毀損があった場合、原則としてホテル・旅館側が責任を負うとされています。

 

「責任を負う」というのは、盗難にあった被害品と同様のものを用意するか、被害相当額を弁償するということです。

 

例えば従業員が誤ってコートを破いてしまった場合などは、ホテル・旅館が責任を負う可能性が高いでしょう。

 

その一方で、ホテル・旅館側が「不可抗力」であることを証明した場合、ホテル・旅館側は責任を負わなくてよいとされています。

 

「不可抗力」とは「どのように注意していたとしても防ぎようがなかったこと」を言います。

 

例えば、大地震や、ホテル・旅館に責任がない火事によってホテル・旅館が全壊、全焼した場合には、「不可抗力」としてホテル・旅館側は責任を負わなくてよいということになるのです。

 

ただ、大地震や火事などは滅多に起こりませんので、普通はホテル・旅館側に責任が発生することが多いのも事実です。

 

 ●貴重品の場合 

 

一方、貴重品は上述した通り、申告の有無によって法律上の取扱いが異なります。貴重品という申告があった場合は、原則としてホテル・旅館が責任を負うとされています。

 

しかし、貴重品であるにもかかわらず、申告がなかった場合は、原則として宿泊客側が責任を負うとされています。ただし、貴重品として申告がなかった場合であっても、ホテル・旅館側に大きな過失があった場合には、ホテル・旅館が責任を負うとされています。

 

これらのことから、ホテル・旅館は後日のトラブルを避けるため、荷物を預かる際は貴重品かどうかを常に確認するといった手順を踏むことが増えています。

 

また、そもそも、ただ預かり札を渡すという対応ではなくて、専用の貴重品ボックスを用意するというケースも増えています。

 

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