その他 経営戦略
連載西村あさひ法律事務所 ニューズレター【第39回】

フェイクニュース・デマ情報への法的対応・基礎編―②改正プロバイダ責任制限法による発信者情報開示手続と企業の対応

フェイクニュース名誉毀損

フェイクニュース・デマ情報への法的対応・基礎編―②改正プロバイダ責任制限法による発信者情報開示手続と企業の対応 (※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、西村あさひ法律事務所が発行する『フェイクニュース・デマ情報への法的対応・基礎編―②改正プロバイダ責任制限法による発信者情報開示手続と企業の対応』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

本ニューズレターは、2021年9月30日までに入手した情報に基づいて執筆しております。

 

前号(2021年8月31日号)でご紹介したとおり、近時、企業がフェイクニュースやデマ情報によって危機に立たされるリスクが高まっており、また、企業不祥事発生時における二次的被害としての虚偽情報の流布・伝播への対応もますます重要となっています。本稿では、こうしたフェイクニュースやデマ情報に対し、企業がどのように対応すべきか、法的観点を中心に基礎的な点から解説をします※1

 

※1 「フェイクニュース」という言葉は、その定義が明確ではなく、「disinformation」(虚偽情報・偽情報)あるいは「misinformation」(誤情報)という用語が用いられることもあります。本稿では、意図的に又は意図せず広められる虚偽もしくは不正確な情報であって、企業価値を毀損したり、正常な事業運営を妨げるおそれのある情報を広く検討の対象とすることとします。

 

今回は、本年4月に成立し2022年後半に施行される予定の改正プロバイダ責任制限法(以下「改正プロ責法」といいます。)の概要や、これを踏まえた今後の展望について紹介致します。

1. 「フェイクニュース」・「デマ情報」への対応における発信者情報開示の位置付け

フェイクニュースやデマ情報によって企業が被害を被った場合、捜査当局に対して告訴又は被害届の提出を行って刑事処分を求めるほか、虚偽情報の投稿者・拡散者に対し、民事訴訟(損害賠償請求、差止請求、名誉回復措置請求・信用回復措置請求等)を提起したり、仮処分の申立てを行うことが考えられます。もっとも、SNSや電子掲示板への虚偽情報の投稿や拡散は、匿名やハンドルネームで行われることが多く、訴訟提起や仮処分申立てのためには、虚偽情報の投稿者・拡散者を特定する必要があります。刑事告訴や被害届の提出に当たっても、被疑者不詳であるよりは、投稿者等が特定されている方が、捜査当局に積極的な対応を促す上でプラスに働くことになります。

 

このため、フェイクニュースやデマ情報に対して法的対応を講じる上では、発信者情報の開示はいわば避けて通れない最初の関門ということになります。

西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2004年東京大学法学部(LL.B.)卒業 、2006年 東京大学法科大学院(J.D.)修了。2020年より、大成ロテック株式会社社外取締役、東京大学法学部非常勤講師。

企業の危機管理、独占禁止法/競争法対応を専門とする。

危機管理分野においては、海外公務員贈賄、製造業の品質問題、営業秘密の漏洩、粉飾決算・インサイダー取引、相場操縦等の金融商品取引法違反、環境法令違反、反社会的勢力問題、従業員による不正行為等の案件を広く扱った経験を有しており、事実調査、行政当局・刑事当局対応(公正取引委員会の確約手続への対応、日本版司法取引への対応を含む)、マスコミ・投資家・消費者対応、原因究明、再発防止策の立案等を含む戦略的な対応を行う。

独禁法/競争法分野においては、刑事事件・行政事件を含むカルテル・入札談合案件、私的独占・不公正な取引方法等の単独行為案件、景表法違反案件等に関与し、国際カルテル等海外当局対応も数多く扱っている。また、国内外の企業結合審査、業務提携に係る公取委・競争当局対応の経験も豊富である。

個別案件を離れて、贈収賄防止体制、競争法管理体制、内部通報制度、内部監査/モニタリング等、法令遵守の仕組み作りへの助言も多く手掛けており、特に機械学習・データアナリティクス、テキストマイニング等の高度テクノロジーを活用した体制整備に通じている。


【主な著書等】

「法務担当者が知っておくべき不祥事予防のメニュー」(Business Law Journal 2021年1月号)、「プラットフォーム時代の『多元的競争』に向き合う法」(Web日本評論「弁護士が推す!実務に役立つ研究論文」、2020年)、「企業不祥事における取締役の監視義務違反」(Web日本評論「弁護士が推す!実務に役立つ研究論文」、2020年)、「不正調査・リスク管理におけるAI・機械学習の活用―法的分析による仮説・検証アプローチ」(朝日新聞社Website「法と経済のジャーナルAsahi Judiciary」、2020年)、「AIに関する法規制と行政手続・刑事手続」(Web日本評論「弁護士が推す!実務に役立つ研究論文」2019年)、 「内部通報受領後の初動対応・不正調査の留意点」(共著、Business Law Journal 2019年6月号)、「企業法務における憲法」(Web日本評論「弁護士が推す!実務に役立つ研究論文」、2018年)、 「日本版司法取引制度への実務対応-平時の備えを中心に-」(共著、商事法務 2167号、2018年)、 『資本・業務提携の実務(第2版)』(共著、中央経済社、2016年)、『危機管理法大全』(共著、商事法務、2016年)、『役員・従業員の不祥事対応の実務~社外対応・再発防止編~』(共著、レクシスネクシス・ジャパン、2015年)、「米国反トラスト法の国際的適用範囲をめぐる民事訴訟の動向」(『NBL No.1054(2015年7月15日号)』)、『実例解説 企業不祥事対応 - これだけは知っておきたい法律実務(第2版)』(共著、経団連出版、2014年)、『資本・業務提携の実務』(共著、中央経済社、2014年)、『条解 独占禁止法』(共著、弘文堂、2014年)、『インサイダー取引規制の実務[第2版]』(共著、商事法務、2014年)、「独禁法70条の15に基づく審判事件記録の閲覧謄写について - 東京高判平成25・9・12」(『ジュリスト No.1462(2014年1月号)』)、「金融商品取引法の課徴金制度における偽陽性と上位規範の活用による解決」(『旬刊商事法務 No.1992(2013年3月5日号)』)、「事業者の行為と他事業者の排除との因果関係(JASRAC事件)」(『ジュリスト No.1445(2012年9月号)』)、「The Public Competition Enforcement Review - Fourth Edition - (Japan Chapter)」(『The Public Competition Enforcement Review - Fourth Edition -』, 2012)、『判例 米国・EU競争法』(共著、商事法務、2011年)、「発行会社の立場からみた証券訴訟対応における実務上の留意点」(『ビジネス法務 Vol.9 No.3(2009年3月号)』)

【受賞歴】

2020年 Best Lawyers, 2021 (Antitrust / Competition)
2021年 The Legal 500 Asia-Pacific 2021: Risk management and Investigations Next Generation Partner

著者紹介

連載西村あさひ法律事務所 ニューズレター

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○執筆者プロフィールページ
   沼田 知之

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