透析になるかどうか…正念場の「クレアチニン値」
私の場合、CKD治療の「踏ん張りどころ」はクレアチニン値1.5~3mg/dLだと認識しています。ここで患者さんが食事療法をしっかり実践し、医師も適切な治療をしっかり行えば、原疾患や合併症の状態にもよりますが、透析を回避することは可能です。「透析にならずにすむよう手を尽くしますから、頑張りましょう」とお話しできるのです。
そして、たとえ結果的に透析を導入することになっても、その時期を遅らせることができます。
今までの自分の経験では、クレアチニン値1.5~3mg/dLであれば、透析まで少なくとも1年の余裕はあるケースがほとんどなので、その間に患者さんと、今後どんなライフプランをもち、どんなライフスタイルを望んでいるのかを話し合い、それをできるだけかなえる方法を一緒に考えることができます。
患者さんも、今後の自分の生き方についてじっくり考える余裕がもてます。
クレアチニン値が4~5mg/dLくらいまで上がってしまうと、腎機能がすでに正常の10~20%まで落ちていることを意味するので、治療をしても腎代替療法はまず免れない状況になってしまいます。
しかも、透析導入までの時間的余裕もそうありません。数ヵ月後には透析スタートをしなければならないケースも。食事制限もかなり厳しくしなければならず、苦痛を伴いますし、貧血などによる自覚症状が出てくる人も多くなってきます。
そんなに具合が悪くない、と思っていても、クレアチニン値1.5~3mg/dLは、治療をしっかり受けて透析を遅らせる努力をするとともに、透析になった場合にどういう方法が良いかも考え始める「正念場」といえます。
鈴木 孝子
南青山内科クリニック 院長