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中小企業・スモールM&Aでは、会社の財務資料や経営情報がそろっていないことも多く、また、正確性や信頼性が乏しい場合もあります。そのような状況で、企業の価値算定や譲渡価格の決定はどうすればいいのでしょうか。具体的な方法を解説します。※本記事は『スモールM&A実務ハンドブック』(五十嵐次郎著、中央経済社)より抜粋・再編集したものです。

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企業価値算定方法に「時価純資産+のれん」を使うワケ

Q スモール企業価値算定の方法はどのようなものがありますか? M&Aの譲渡価格はどのように決まるのでしょうか?

 

A スモールM&Aの企業価値算定方法は、時価純資産プラスのれん(いわゆる「年買法」)が一般的です。

 

スモールM&Aにおける企業価値算定方法に、主に年買法の手法をベースに他手法も参考値として用い、その評価額にて簡易査定する方法が一般的です。年買法は、その評価方法が売り手、買い手ともにわかりやすく、簡易かつ素早く算出できる点が大きな利点です。

 

中小企業・スモールM&Aにおいて、対象会社の財務資料、経営情報がそろっていることは稀であり、正確性や信頼性もやや乏しいものが多くあります。その中でも会社の税務申告書は、顧問税理士が確認した税務署に提出する公的書類で、すべての会社に必ず存在し、早期に入手可能です。売り手と買い手が価格交渉を行う際、双方に共通して会話できる財務データが必要ですが、この決算書(税務申告書)を基礎に交渉が進められます。

 

倍率法(マルチプル法)は、上場企業(同業)の株価(時価)を参考に、事業価値および株式価値を算出しますが、スモールM&A取引対象の中小企業の企業規模と、同業の上場企業の企業規模があまりにも乖離している場合には、同業種の同様の事業内容(ビジネスモデル)のもとでの価値算定ができるかどうかの評価が難しいといえます。

 

DCF法に関しては、対象会社にDCF法評価に使用する事業計画(合理的、論理的な)が存在することが稀であり、こちらもスモールM&Aの評価方法としては難しいといえます。

「時価純資産+のれん」のメリット・デメリット

時価純資産法プラスのれん(年買法)の利点(メリット)は、以下のとおりです。

 

●決算書(税務申告書など)に基づき、個別の資産項目を検討し集計される

●時価純資産額や会社清算価値(評価下限)を把握することができる

●個別資産の検討に加え、無形資産である営業権(のれん)の評価が可能である

●比較的簡易に価値を把握できる、わかりやすい

 

一方、留意点(デメリット)は、以下のとおりです。

 

●個別資産の評価には、情報の入手と検討する時間が必要

●営業権(のれん)の評価につき、恣意性が入りやすく、論理的ではない

 

 

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