※画像はイメージです/PIXTA

米国で30年以上研究者として活躍し、現在はスタンフォード大学医学部で教鞭をとる筆者が、仕事を極限まで効率化して最大の成果を得る、具体的なビジネススキルを公開! 今回は、会議を効率化する秘訣のほか、日本流のマナーや慣習がビジネスの機会損失の原因となっている現状を取り上げます。※本連載は、スタンフォード大学教授、医学博士の西野精治氏の著書『スタンフォード式 お金と人材が集まる仕事術』(文藝春秋)より一部を抜粋・再編集したものです。

不要な人を排して、「なんとなく会議」をやめる

特にアジェンダもないのに、「そういうものだから」として行われる定例会議などは、まさに会議のための会議になっているのではないでしょうか。日本はこのパターンが多いと感じます。そして私が見るところ、日本の会議の多くが長くなる原因はもう一つあり、それは「必要がない人」が参加していることです。

 

スタンフォードの場合、基本的に自分で招集する5、6人のメンバーを選抜しますが、それはそれぞれ必要な意見を述べてくれる専門家たちです。また、メンバーの専門の範囲を超える場合は、外部から専門家を招集することも多いです。

 

動物実験について話し合うのであれば、アジェンダに応じて動物実験施設の担当者に議題内容を説明して参加してもらいます。専攻を問わず、教授と名のつく人がほぼ自動的に委員に選任されて、会議に出席を要求されるような委員会もありません。

 

各研究室にラボマネージャーが置かれ、メーリングリストもあり、たとえば基本的なラボの運営や安全性についての話し合いであれば、私が出席する必要はありません。アドミン(事務方)の会議にしてもそうで、出席者は、決定権が与えられています。若い人たちの研究で、パイロットデータを取る際に、他のラボの装置を借りたり、他のラボの協力を得たりすることもありますが、向こうのラボのPIを通す必要もない際には、若い研究者同士で自由に共同研究を行ってもらっています。

 

そのほうが、私にとっても彼らにとっても時間を有効に使うことができます。それよりも、「この部分については医学部ではなく生物学部の研究者、場合によっては、工学部の流体力学の専門家や、統計学の専門家の意見を聞きたい」という具合に必要性をもとにメンバーを選び、その都度しかるべき人を呼んで会議をしたほうがよほどいいのです。おのおの役割が明確なメンバーだけが参加していれば、会議に出ても何も発言せずに終わるということはなくなります。

 

一番まずいのは、「ポジションが高く、特定の役職についた人は通例で決められた会議に出る」というパターンで、これが慣例化している日本企業は多いのではないでしょうか。

 

日本の大学もこの悪しき習慣が残っているのか、教授になったら自動的に役員や審議会メンバーを複数割り当てられ、すべての会議に出席しなければならないという話もよく耳にします。いかに優秀であっても複数の案件にコミットするのは不可能ですし、その必要がないことも多い。結局、とりあえず会議に顔を出して座っているだけになります。あるいは、教授の代理で、准教授や助教が出席することもあるようで、そうなると、ますます出席者が発言し議論する会議ではなくなります。

 

同じことは日本企業にも当てはまり、高校時代の友人で役職が高い人など、「毎日毎日、ひたすら会議ばかりだよ」とこぼします。限られた時間が、「なんとなく会議」で潰れていくのは生産性が低いとしか言いようがありません。私も日本の企業と会議をすることがありますが、行ってみないとアジェンダがわからないケースも多々あります。

 

「わざわざ時間をとって日本まで来たのに、あるいは、わざわざスタンフォードまで複数人で日本から訪問しているのに、なぜ会議前に主たる用件を言わないのだろう?」と不思議に思うことも多いです。とりあえず長々と挨拶をしたり、本題とほとんど関係ない、昔の米国留学のお話をされたり、ますます用件がわからなくなります。本題は最後の数分で終わるか、「次回お会いした時にもう少し具体的なお話を」というパターンが珍しくありません。次回があるならそれでもいいですが、次回がなければそれこそ時間の無駄です。

 

最初の会議はどうしても挨拶や自己紹介的な要素は免れないにしても、中には、ただ座っているだけでは申し訳ないと思うのか、あるいは自分の存在意義が脅かされると思うのか、毎回出席して的外れな発言や意味のない世間話を披露する人もいます。その話が長いとなると、人畜無害ではなく時間泥棒でしょう。

 

こうした会議が仕事になっているような「時間泥棒」は、あらかじめ会議から排除する。ポジションではなく、専門性や担当している業務で柔軟に会議の参加者を決める──。こうしたシンプルなルールを取り入れれば、会議の効率化はずいぶんと進むはずです。

 

 

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スタンフォード式 お金と人材が集まる仕事術

スタンフォード式 お金と人材が集まる仕事術

西野 精治

文藝春秋

スタンフォード大学で学んだ著者が説く、仕事術! 著者がアメリカトップの大学の一つであるスタンフォードの門を叩いたのは1987年のこと。それから多くの蒙を啓かれること30年余、真の成果主義や個人主義について学びました…

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