パートナーとなるスポンサーは「同業他社」がベター
シャープのケースから学べることの第一は、パートナーとなるスポンサーの選択肢としてはファンドよりも、同じ事業を営んでいる企業のほうが、つまりは同業他社のほうがベターであるということです。
業界について十分に理解していることがもたらすメリットやシナジー効果等が期待できるからです。
このことは、原子力事業の巨額損失等により経営危機に陥った東芝の事例と比較することでより明らかになるかもしれません。
東芝はシャープと異なり、現在、投資ファンドからの資金によって経営立て直しに取り組んでいるところです。東芝は再建の手段として、「事業の切り売り」を選択しました。具体的には、PC事業、白物家電事業、医療機器部門などを手放しました。残っているのは原子力事業と社会インフラ事業だけです。
このような東芝の現状に対して、「これからどのように生き残るつもりなのか」と疑問を投げかける識者もいます。
たとえば、『シャープ再建鴻海流スピード経営と日本型リーダーシップ』(啓文社書房)のなかで、著者の中田行彦氏は「(東芝の)課題は『事業切り売り』したあとに『何で稼ぐか』である」と指摘しています。
一方、シャープは出資者である鴻海が同じ製造業者でしたし、そもそも同社はシャープの事業を活かすためにスポンサーとなったのですから、東芝のように事業を切り売りする必要がありませんでした。
現在、シャープの事業は3つのセグメントから成り立っています。
冷蔵庫、過熱水蒸気オーブン、電子レンジ、小型調理機器、エアコン、洗濯機、掃除機、空気清浄機、扇風機、除湿機、加湿機、電気暖房機器、プラズマクラスターイオン発生機、理美容機器、電子辞書、電卓、電話機、ネットワーク制御ユニット、太陽電池、蓄電池、カメラモジュール、センサモジュール、近接センサ、埃センサ、ウエハファウンドリ、CMOS・CCDセンサ、半導体レーザー等
②8Kエコシステム
液晶カラーテレビ、ブルーレイディスクレコーダー、オーディオ、ディスプレイモジュール、車載カメラ、デジタル複合機、インフォメーションディスプレイ、業務プロジェクター、POSシステム機器、FA機器、各種オプション・消耗品、各種ソフトウェア等
③ICT
携帯電話機、パソコン等(2020年3月現在)
2021年3月に発表された2020年度第3四半期決算では、これら3つのセグメントすべてが黒字でした[図表1]。
ちなみに、東芝が手放したパソコン事業を購入したのはシャープでした。東芝のときには赤字続きだった同事業は、買収後、黒字に転換しています。また、日本のスマホ市場で生き残って最新機種を出している数少ない日本メーカーがシャープとなっています。
このように、同業者という知見とノウハウを共有できるパートナーを得ることによって、自社の事業価値を最大化することが可能となるのです。
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