今回は、マンションは何年ぐらいもつのかを見ていきましょう。※本連載は、須藤桂一氏の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、マンション管理に様々な問題を抱える、いわゆる「ブラックマンション」の概要と、ブラック化の回避方法を見ていきます。

60年、47年・・・これらの数字はどこから出てきたのか?

筆者はときどき「マンションは何年ぐらいもつのですか?」という質問を受けることがあります。確かに、マンション取得を考えている人にとっては気になるところでしょう。

 

一方で、「マンションって60年ぐらいは住めますよね」という言葉もよく聞きます。この「60年」という数字がどこから出てきたのかというと、おそらくこれは、鉄筋コンクリート造の建物(=マンション)の資産価値を計算する便宜上、財務省が一律で定めた法定耐用年数が60年であったことからきていると思われます。

 

それが、1998年の税制改正で、以降の鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数は「47年」とされ、短くなりました。この数値は、建物が減価償却をする耐用年数を意味しています。

 

では、なぜ「47年」という数字になったのかというと、数は少ないのですが、1998年当時に取り壊されたマンションの平均寿命が約46年だったからなんですね。そのあたりが、税法上の耐用年数に定義されているのではないでしょうか。

マンション寿命を延ばす「スケルトン・インフィル」

実は、それらのマンションが取り壊された理由というのは、その多くが設備配管類(給水管や配水管、ガス管など)を取り換えられない造りになっていたことにあります。

 

設備配管類の寿命はコンクリートよりも短く、だいたい30年程度です。昭和初期に建てられたマンションには、この設備配管類をコンクリートに埋め込む施工で造られている例が多くみられます。

 

コンクリートに埋まっていると、配管類を取り換えることができないため、結果としてマンションの解体や建て替えを余儀なくされてしまいます。要するに、古いマンションは配管類の寿命とともに、建物も寿命を終えることになっているのです。

 

現在では、マンションにおいて耐用年数を上げるために、設備配管類のコンクリート埋設をしないことは最低限の条件だといえます。そこで、ここ20〜30年前からは「スケルトン・インフィル」という工法が主流になっています。

 

スケルトン・インフィルとは、建物を構造体(スケルトン=骨格)と内装・設備(インフィル=内外装・設備・間取りなど)に分けて設計する考え方のことで、たとえば、設備配管類をコンクリートに埋め込むのではなく、パイプスペースなどを設けて、そこに設置するような設計のことをいいます。こうした仕様ならば、構造体を壊すこともなく、設備配管類の修理や更新が簡単にできます。

 

つまり、配管類やサッシ、内装などの設備機器を丁寧に更新していけば、コンクリートの耐用年数がマンションの耐用年数(寿命)になるわけです。

 

最近、建築業界では「100年建築」という言葉がよく使われます。けれど私は、丁寧に使えば、200年でも300年でも使い続けることができるのが現代のマンション、つまり鉄筋コンクリート造だと考えています。

 

よく考えてみると、わが国には法隆寺をはじめ、木造建築で千年以上使い続けているという建造物もたくさんあります。そうした木造よりもずっと丈夫で、耐久性のある鉄筋コンクリート造のマンションを、数十年でスクラップにしてしまうという、不経済で環境負荷の大きなことは決してやってはいけないと思うのです。

 

[図表]スケルトン・インフィルと従来型の違い

 

イラスト=田中マコト 

本連載は、2015年4月21日刊行の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

須藤 桂一

保険毎日新聞社

金融破綻、年金破綻、そしてマンション破綻、著者はこの3つを「日本の三大破綻」と位置付けている。高すぎる管理費が修繕積立金を圧迫するなか、人口が減少していくニッポンで地方のマンションは資産価値を保ち続けることがで…

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