責任のなすり合い、飛び交う怒号…「会社存続の危機」に社長が下した決断【物流のケーススタディ】

責任のなすり合い、飛び交う怒号…「会社存続の危機」に社長が下した決断【物流のケーススタディ】
(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍により人々の消費行動が大きく変化するなか、企業においても柔軟な対応が求められています。今回は、自社の急成長に伴い新たなシステムを導入が必要となったある企業の事例から、経営者に求められるリーダーシップと、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の重要性を見ていきます。

変容のリーダーシップで見出した解決策

危機に陥ってしまった状況を改善するにはどうすればいいか、社長は解決策を模索しました。そこで気づいたのは、何よりもまず「営業と工場のコミュニケーションを向上させることが大切である」ことです。

 

そもそも、営業サイドが把握している顧客側の「需要情報」と工場サイドが把握している「供給情報」はサプライチェーンの基本となる情報ですが、それがまったく共有されていないことが問題だと気づいたのです。

 

また、誰も状況を把握していないので都度調整が発生し、結果的に声の大きい担当者の意見が通っていました。会社として顧客戦略や製品戦略は、現場のオペレーションとまったく関連性がなくなり、その場しのぎの緊急対応の連続で高コスト化し、過剰在庫、欠品、納期遅延により現場は疲弊していたのです。

 

状況を改善するには、新しく導入したシステムに正確なデータを入力してもらうのが先決です。しかし、「入力しろ!」と声を荒らげて指示しても、効果は期待できません。なぜ入力する必要があるのか、なぜシステムを刷新する必要があるのか、自社の価値観と照らし合わせて現場に繰り返し伝えることから始めました。

 

価値観とは「高品質な製品をどこよりも早く、顧客が必要としているときに確実にお届けする」ことです。それを実現するには、システムの入力を極力簡素化し、正確に確実にデータ入力を行うことが重要であることを伝えました。現場の意見にも耳を傾け、改善を実行しました。

 

次に需要と供給のつながりを「見える化」するサブシステムを導入しました。材料と製品の在庫を管理するシステムです。材料と製品の出荷実績ベースで需要を把握し、安全在庫や必要量を算出し、営業と工場でこのデータを共有しました。在庫管理システムで在庫をリアルタイムに管理し、販売計画、受注、生産指示数を関連付けさせて、工場サイドはこのデータを基に生産計画を立てるようにしました。

 

その結果、需要情報と供給情報が共通のデータで見えるようになり、全体会議ではこの情報を基に予算実行の予実管理(予算と実績の管理)が行えるようになりました。営業から工場まで、販売から材料までつながった情報連鎖が構築されたことによって、会社に信頼性の高いサプライチェーンが構築された瞬間でした。

 

これにより、営業と工場のコミュニケーションの質が劇的に向上しました。互いに責任のなすり合いをすることはなくなり、データを活用した分析と改善、実行が実践されるようになりました。リードタイムも短縮され、コスト競争力も向上し、お客さまに納期を正確に回答できるようになり、受注が戻り始めました。

 

[図表2]F社が取り組んだSCM

 

東 聖也

株式会社オンザリンクス

代表取締役

 

 

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※本連載は、東 聖也氏の著書『WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

東 聖也

幻冬舎

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