※画像はイメージです/PIXTA

河野太郎議員が自民党総裁選挙に立候補しています。河野議員は厚生年金の積立方式への移行を打ち出しているので、本記事ではそれについて筆者の考え方を述べたいと思います。あくまでもタイムリーな話題として考察するものであり、河野議員を応援するものでも批判するものでもないので、その点はあしからずご了承ください。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

積立方式はインフレに弱いから「賦課方式」を維持?

一方、賦課方式には大きな長所があります。インフレに強いことです。インフレになると現役世代の給料が上がりますから、高い保険料を支払ってもらうことが可能になります。それを高齢者が山分けすれば、高齢者の受け取る年金が増えます。

 

老後の生活費が増えても、その分だけ受け取れる年金が増えれば、老後の生活は大丈夫だ、というわけですね。

 

積立方式だと、現役時代が支払った保険料を数十年間運用して老後の年金支払いに用いるわけですが、よほど上手に運用しないとインフレが来たときに資産が目減りする(同じ金額で買えるものが減ってしまう)というわけですね。

 

少子高齢化に弱いけれどもインフレに強い賦課方式と、少子高齢化には強いけれどもインフレには弱い積立方式、という一長一短なわけですね。

 

ちなみに、払い込まれた保険料を各自が運用する方式(企業の確定拠出年金の方式)と、年金会計がまとめて運用する方式が考えられますが、前者は厚生年金の基本的な発想からズレています。確定拠出年金は、長生きリスクに備えるものではありませんが、厚生年金は長生きリスクに備えるものだからです。

 

早死にする人と長生きする人がいるので、運悪く長生きしてしまって(笑)老後資金が足りなくなってしまう人が出てしまうことがないように、「みんなで金を出し合って、長きしてしまった人を支援する」というのが厚生年金なのですから。だって、本名は厚生年金保険という名前なのですよ。

移行期の不足額は、資産と両建ての「特別国債」で調達

賦課方式から積立方式に移行するときには、巨額の資金不足が発生します。筆者世代が支払った保険料は、父の世代の年金として支払われてしまってあまり残っていませんから、子どもたちが積立方式に移行してしまうと、筆者世代の老後の年金の分だけ資金が不足するのです。

 

移行に反対する人の多くが、これを反対理由に挙げているようですが、筆者はこの問題をあまり重視していません。足りない分は借りればいいからです(笑)。

 

無制限に財政赤字を膨らませて国債を発行しよう、といっているのではありません。筆者の子ども世代が老後に備えて蓄えている資金は、年金会計が管理するわけですから、年金会計の資産を見合いに国が借金をすればいいわけですね。

 

いまとくらべれば、年金会計の資産と国の負債が両建てで膨らむわけですが、それは問題視するような借金ではありませんね。政府部門の純資産で見ればいまと変わらないわけですから。年金会計が管理している資金を全額国債で運用した、と考えれば、なにも問題がないことは容易に理解できるでしょう。

 

奇抜な案に聞こえるでしょうが、国が物価連動国債を発行して、年金会計が購入するとすればいいかもしれません。年金会計は、インフレになると国債償還時に多く受け取れますから、年金支給額を増やすことができるかもしれませんね。インフレになると国の支払い負担が増えますが、税収も増えると期待されますから、それほど問題はないといえそうです。選択肢としては要検討かもしれません。

「世代間不公平」が詭弁であると考えるワケ

ここから先は余談です。少子高齢化になると少ない現役世代が多くの高齢者を支えるので大変だ、世代間不公平だ、と言われます。特に、積立方式に移行する際に発生する巨額の借金を将来の少ない人数で返済するのは大変だ、と心配する人は多いでしょう。

 

しかし、日本人の家計は2000兆円の金融資産を持っています。それ以外にも不動産等も持っているでしょう。それを少ない人数で相続するわけですから、将来世代が受け取るひとり当たり平均の遺産額はとても大きくなっているはずですね。

 

つまり、問題は、世代間不公平ではないのです。遺産が受け取れる子と受け取れない子の「世代内不公平」なのです。この問題は、余談ですから、別の機会に。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

 

塚崎 公義

経済評論家

 

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