(※写真はイメージです/PIXTA)

40歳を超えた頃から、徐々にひざの痛みを訴える人が増えてきます。ひざ痛の原因として最も多いのは「変形性膝関節症」で、潜在的な患者は約3000万人にのぼるとも…。ひざの痛みは、放置すれば歩行困難にもなりかねない危険な症状です。寝たきりを回避するためにも早めに治療を始めなくてはいけません。いざというときに適切な治療を受けられるように、本稿にてひざ痛の初期~進行期に行われる「手術以外の治療方法」の例を知っておきましょう。

痛みや炎症を抑える「薬物療法」

痛みのコントロールは、日常動作に大きく影響してくるだけに大事な治療となります。

 

痛みや炎症を抑える目的で、一般には痛み止めといわれる「消炎鎮痛剤」を用いた薬物療法が行われます。変形性膝関節症の薬には、非ステロイド系の外用薬、内服薬、座薬、関節内注射が用いられます。

 

●外用薬

有効成分が直接ひざの皮膚から吸収される(経皮吸収)ので、効率良く患部に届いて作用するのが外用薬のメリットです。これには、クリームや軟膏、ゲルなどの塗るタイプと、湿布として貼るタイプがあります。

 

胃腸の弱い人が内服薬を服用すると胃痛や腹痛を起こすことがありますが、外用薬ならそうした副作用の心配がないため、長期間使用することができます。ただ、これらは皮膚が弱い人はかぶれることがあります。

 

外用薬には、関節の腫れや痛みを抑える非ステロイド系の抗炎症剤または鎮痛剤としてインドメタシン配合のものなどがあります。

 

また、湿布薬には冷湿布と温湿布があり、どちらも痛みや炎症を抑える効果をもっていますので、貼り心地で選ぶと良いでしょう。ただし、温湿布は少しかぶれやすいので注意が必要です。

 

●内服薬

外用薬では痛みを抑えられない場合は、比較的短時間で効果が現れやすい内服薬を用います。非ステロイド系の消炎鎮痛剤には錠剤やカプセルなどがありますが、どのような剤形でも作用は同じで、炎症を抑える、痛みを和らげる、熱を鎮める働きがあります。

 

ただ、剤形によって持続時間が短いので1日3回服用のもの、持続時間が長いので1日2回服用のものなど特徴があるため、患者さんの使いやすさや体質などを考慮して選ぶようになります。

 

内服薬は手軽で扱いやすいというメリットがある一方、成分が血液から吸収されて全身を巡るため、その作用は膝関節だけにとどまりません。必要のない部位にまで影響が及び、最も多く見られる副作用が胃腸障害です。そのため、胃腸薬も一緒に処方されます。

 

主に非ステロイド系の消炎鎮痛剤が処方されますが、最近は同じ効果をもたらしながら副作用が起こりにくいCOX-2選択的阻害薬が多く用いられるようになっています。

 

●座薬

特に痛みが激しいときや、胃腸が弱くて内服薬が使えない場合は、座薬(肛門から挿入する薬)が用いられます。薬を直接粘膜から吸収させるので、即効性が期待できます。

 

●関節内注射

内服薬では症状が軽快しない場合や副作用などで内服が困難なときには、関節に直接薬を注入する関節内注射を行うことがあります。これには、ヒアルロン酸とステロイド薬があります。

 

ヒアルロン酸は、もともとひざの関節液に多く含まれている成分で、関節の滑りを良くしたり、衝撃を和らげたりする役割があります。それが、変形性膝関節症になるとヒアルロン酸が少なくなるので、それを補って関節の滑りを良くします。

 

ヒアルロン酸の注射は、症状に応じて適宜行います。

 

もう1つのステロイド薬の注射は、激しい炎症や痛みに対する効果は期待できるのですが、これは一時的なものであり、何回も行うと関節や軟骨を破壊するうえ、免疫機能を低下させることから細菌に感染しやすくなることが分かっています。また、糖尿病の人は症状が悪化することもあります。

 

したがって、ステロイド薬の注射は、痛みが激しくてどうしても我慢できないときに用いる最後の切り札と考え、慎重に行う必要があります。

 

 

松田 芳和

まつだ整形外科クリニック 院長

 

 

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※本連載は、松田芳和氏の著書『ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

松田 芳和

幻冬舎メディアコンサルティング

ひざ痛の予防から再生医療まで。 人生100年時代を豊かに生きるための「ひざ寿命」の延ばし方を徹底解説。 昨今、「健康寿命」の重要性が問われています。 人生100年時代といわれて久しいですが、その生活の質を左右す…

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