ひざ治療は、痛みを軽減させる「保存的治療」がメイン
変形性膝関節症と診断がついたら治療を開始しますが、関節軟骨の場合は一度すり減ると元通りに再生されることはありません。そのため、痛みの原因となる炎症を抑えたり、膝関節への負荷を軽減するなどして進行を食い止める治療が主体となる「保存的治療」か、手術による「外科的治療」かを、進行度や患者さんのQOLに合わせて行うようになります。
保存的治療には、薬物療法や温熱療法、運動療法、装具(そうぐ)療法などがあり、患者さんの症状に応じて行いますが、痛みの症状を軽減する目的で初期から進行期に行われるケースがほとんどです。しかし、変形性膝関節症の根治療法ではないため、保存的治療を続けていても徐々に進行していきます。根治療法とは、症状の原因を取り除くことで根本から治すことを目指した治療法のことです。
末期の状態となり保存的治療では症状のコントロールができなくなってくると、手術による根治療法が検討されるようになります。
重症度を示す4つのグレード
変形性膝関節症の治療法を考えるとき、目安とされるのが重症度を示すグレードという指標です。これは、X線検査によって膝関節の状態を見るもので、次に示す4段階に分かれています。グレード1は予備軍、2は初期、3は進行期、4は末期とされています。
治療法の考え方としては、初期から進行期までは保存的治療の適応、進行期から末期にかけては外科的治療が検討されます。ただし、これはあくまでも目安で、例えば初期の段階でも痛みが強くて日常生活に支障が生じている患者さんがいる一方、末期に近い状態でもあまり痛みを感じていない患者さんがいるなど、症状とグレードが必ずしも一致するものではありません。ですから治療法は、関節軟骨の状態と症状などを見ながら総合的に判断するようになります。
●グレード1(予備軍)
大腿骨と脛骨の隙間は保持されていますが、わずかな骨棘や軟骨の骨硬化が見られる状態。
●グレード2(初期)
⇒大腿骨と脛骨の隙間が正常に比べて25%以下(例えば10ミリあった隙間が7.5ミリになっている)になり、わずかな骨棘が見られますが、骨の変形は確認できない状態。
●グレード3(進行期)
⇒大腿骨と脛骨の隙間が正常に比べて50~70%以下(例えば10ミリあった隙間が5~7ミリになっている)になり、骨棘や骨硬化が確認できる状態。
●グレード4(末期)
⇒大腿骨と脛骨の隙間がほぼ消失(75%以上)し、骨どうしがぶつかり合っています。大きな骨棘ができて骨の変形も激しい状態。
では、これらを踏まえて次項から具体的な治療法を説明していきます。