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夜逃げさながらの物件…「後始末引き受け」の悲惨
「僕が依頼者と荷物を片付けますので、2週間ほどいただけますか?」
写真をご覧になった弁護士の先生も、この荷物を老夫婦だけではとてもじゃないけれど片付けられないと思われたようです。自分も確認していなかったのは悪かったので、一緒に作業しますということでした。
片付けなかった老夫婦がいけないのですが、家主の怒りも冷めやらず、先生にも協力をしていただくことになりました。
50年以上住み、理容店を営んでいた荷物や備品の数は、半端ではない量だったようで、先生は2週の週末をすべて片付けに費やし、また平日も粗大ごみを出しに現地に通ったりと奮闘したようです。老夫婦にお金がないので、可能な限り自分たちで処分して、残った分は業者に引き取ってもらいました。若い先生なので頑張ってくれましたが、もし先生が片付けてくれなければ、この費用も結局家主の負担になってしまいます。
長いこと住んでいただけることは光栄なことでしょうが、その分賃借人は歳を重ね、荷物はどんどん増え、そして高齢者本人では身動きできなくなります。
「片付けようと思ってはいるけれど、もう体がついてこない」ということでしょうか。荷物の片付けを入居者任せにしていると、結局家主が処分費用すら負担することにもなりかねません。滞納賃料を払ってもらえないだけでも痛手なのに、荷物の負担まで背負わされるとなると、たまったもんじゃありません。それを避けるためにも早い段階で話し合ったり、断捨離を手伝ったり、そんなサポートも必要な時代かもしれません。
弁護士の先生は「これから高齢者の依頼には、もっと慎重になります」と苦笑いされていました。まさかご自身が、依頼者のゴミの処分を手伝うことになるだなんて、思いもしていなかったはずです。
自営業の幕引き。これから大きな社会問題になりそうです。
※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。
太田垣 章子
OAG司法書士法人代表 司法書士