日本ハムが北海道北広島市で「街づくり」する“必然”の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本ハムは今、北海道北広島市に、球場を核とした“新たな街”を創造しています。これは決して「札幌ドームでは思うようなビジネス展開ができないから」ではなく、日ハムにとって次のビジネスチャレンジです。とはいえ、なぜ球団が、球場だけでなくその周辺を含めた大規模なエリア開発にまで挑むのでしょうか? プロジェクトの“総指揮者”ともいうべき(株)ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長・前沢賢氏に取材してわかった、従来の「球団」という枠組みでは決して捉え切れない壮大なプランの一部を、本稿で見ていきましょう。

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※本連載は、喜瀬雅則氏の著書『稼ぐ!プロ野球』(PHPビジネス新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

野球人気が低下していく「負のスパイラル」

ファンを増やす。そして、球場への観客動員を増やす。

 

そうすれば、チケット収入が増える。球場での飲食やグッズの売上が伸びる。ファンの関心が高まればメディアでの中継も増え、放映権収入だって増える。

 

球場に『人』を呼ぶ。そうなれば、あらゆる局面での相乗効果が生まれてくる。

 

これこそが、球団経営の“一丁目一番地”でもある。そのためには、ファン層の「三角形」(図表参照)を大きくしなければならない。

 

北海道日本ハム球団のファン数は推定300万人。三角形の「外側」には、まだファンになっていない約1億2400万人がいることになる
【図表】北海道日本ハム球団のファン層(推定300万人) 三角形の「外側」にはまだファンになっていない約1億2400万人がいることになる

 

しかし、その拡大策には、すでに限界が見え始めている。少子高齢化が進む日本社会。必然的に、子供たちの数が減り、ひいては野球に取り組む競技人口も減る。それが、野球人気の低下へとつながっていく恐れが大だ。

 

その“負のスパイラル”への危惧は、球界全体で共有していることでもあり、これは野球に限らず、「コンテンツ」を扱うすべての産業が同じ悩みを抱えているに違いない。

 

だから、子供たちへのファンサービスを強めないといけない。

 

全国各地で野球教室を行って、まずは野球に触れてもらおう。そうやって野球に親しんでくれれば、大人になってからも、野球を見てくれるだろう。

 

未来への投資。その観点からの戦略は、決して間違いではない。プロ野球球団だけではなく、アマも含めた日本の野球界全体としての努力を惜しんではいけない。

今や「野球だけ」でファンを増やすことはできない

「私の仮説なんですけど」

 

ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長の前沢は、再びホワイトボードに「△」を描いた。

 

「今までのプロ野球が隆盛を極めたというのがあったのは、そこに長く胡坐(あぐら)をかいていたというのはあるんですけど、ファンじゃなく競技者として考えると、この一番下、小学生が膨大にいて、中学、高校、大学、プロと上がっていくにつれてどんどん脱落していくんですけど、三角形の中にいる人たち、そして離脱していった人たちがみんなファンになってくれていたんですよね。それによって、プロ野球は隆盛したと思うんです」

 

三角形の右辺から、前沢が何本もの「↘」を描いた。

 

プロという頂点を極められず「野球選手」というカテゴリーからこぼれ落ちた”元プレーヤーたち”は、それこそたくさんいる。

 

しかし、時代の流れはスピード感を増している。

 

平成の時代に入り、サッカーはJリーグ、バスケットボールもBリーグと、プロリーグが誕生した。サッカーやラグビーのワールドカップとなれば日本中の関心が集まり、日本代表選手ともなれば、その注目度は格段に上がる。

 

アマチュアしか参加できなかったオリンピックも、プロ契約のアスリートたちが出場できるようになった。メダリストという名誉は、子供たちの憧れの的でもある。

 

かつてのように、プロスポーツは野球だけ。運動神経のいい子供たちは、まず野球部に入る。そんな“昭和のスポーツシーン”は、もはや過去のものだ。

 

こうした社会状況の変化から見ても、野球界はもはや安泰ではない。

 

少子化による競技人口の減少。そして、スポーツや趣味の多様化。野球界を下支えしてきた“元プレーヤー”も、これからは間違いなく減っていくのだ。

 

前沢の舌鋒(ぜっぽう)は、さらに鋭さを増していく。

 

「『ここ』がないんです」

 

前沢が、ペンで指し示したカテゴリーには「小学生」とあった。

 

「この『裾野を拡大していきましょう』という人はたくさんいます。でも、現実としてかなり難しいです。だって、人数が減っているんですから。競技者人口の増加、もしくは減少の歯止め。大義としてやらなくちゃいけないんですけど、それに手を加えるよりは、この周辺にいる人たちに『プロ野球』というエンターテインメントのくくりの中で説明する方が簡単じゃないですか? これが、そもそもの発想なんです」

 

北海道日本ハムのファンでもなく、野球にそれほど関心もなく、北海道にも縁がない。そんな「1億2000万人」に対して、いかにしてアプローチしていくか。

 

つまり“野球だけ”では、人を引き寄せることはできない。そのためのイノベーションを、前沢は起こそうとしているのだ。

スポーツライター

1967年、神戸市生まれ。関西学院大経済学部卒。

1990年、産経新聞社入社。1994年からサンケイスポーツ大阪本社で野球担当として阪神、オリックス、近鉄、ダイエー、中日、アマ野球の番記者を歴任。2008年から8年間、産経新聞大阪本社運動部でプロ・アマ野球を担当。『産経新聞』夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

2017年7月末に産経新聞社を退社。以後は、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。

著書に『牛を飼う球団』(小学館)、『不登校からメジャーへ』、『ホークス3軍はなぜ成功したのか?』(ともに光文社新書)がある。

著者紹介

連載稼ぐ!プロ野球 ~新時代のファンビジネス~

稼ぐ! プロ野球 新時代のファンビジネス

稼ぐ! プロ野球 新時代のファンビジネス

喜瀬 雅則

PHP研究所

「野球」だけがビジネスではない! データ活用、SNS戦略、グッズ展開、コミュニティ…利益と熱狂を生み出す“勝利の方程式”とは? プロ野球を見れば、いまのビジネスがわかる――。少子高齢化に伴う「野球離」が進み、…

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