
福岡ソフトバンクホークスは2020年7月、本拠地・PayPayドームのすぐ横に、エンターテインメントビル「BOSS E・ZO FUKUOKA」を開業しました。なぜ野球以外のことに巨額の投資をするのか? そう疑問に思ったファンも少なくないでしょう。狙いを理解するには球団=野球という図式を離れて、野球を「スタジアム・ビジネス」の一分野として捉えることが重要です。チームの強さとビジネスの強さは両輪。実はソフトバンクが行おうとしているのは、野球という「すごい『コンテンツ』に見合うビジネス」なのです。ソフトバンク代表取締役専務COO兼事業統括本部長の太田宏昭氏に取材してわかった「新しい経営戦略」の一部を、本稿で見ていきましょう。
※本連載は、喜瀬雅則氏の著書『稼ぐ!プロ野球』(PHPビジネス新書)より一部を抜粋・再編集したものです。
地行浜は「E・ZO」の存在価値が高まる立地
ソフトバンク球団の前身・ダイエーが、福岡PayPayドームを建てたとき、そもそもは「ツインドーム計画」。現在の福岡PayPayドームの横に、野球以外のコンサートやイベントができる多目的ドームをもう1つ、隣接する形で建設するというプランだった。
現在、ホテルは「ヒルトン福岡シーホーク」。
ショッピングモールは三菱地所が運営する「MARK IS 福岡ももち」だが、ここにかつては「ホークスタウン」と呼ばれる大型商業施設があった。
当初は、ダイエーが野球、宿泊、商業施設の「三位一体経営」を担っていたのだ。
小売り革命を起こしたダイエーの創業者・中内㓛(なかうちいさお)の”遺志”を、まるで受け継いだかのように、今なお、この地行浜(じぎょうはま)は開発されているのだ。
「昔は、ダイエーさん一体だったんですね。ツインドームシティのことは、僕らは全く知らないです。ホテルはGIC(シンガポール政府投資公社)さん、モールは三菱地所、ドームはソフトバンクグループが持っていて、3社は違う会社ですよ。
でも、目指していた構想、出来上がりはたぶん、同じことを考えていたんだと思います。泊まれて、遊べて、買い物ができて、一日中、それ以上でも、ここへ来て、楽しんでいただける。
もともとそれを描いて、中内さんが造られたんだろうと思うんです。だから発想としては、変わらないんじゃないですか?」
モールのすぐ横には、タワーマンションも隣接している。
周辺は閑静な住宅街だ。ドーム前には九州医療センターがあり、ホテルの前には博多湾に面した百道浜(ももちはま)が広がっている。住環境としても、観光スポットとしても優れた、まさしく”総合エリア”でもある。そうした至便なエリアだからこそ、アミューズメントを集結させた「エンタメ総合ビル」の存在価値が、ますます高まる仕組みが内蔵されているのだ。