日ハムが「20ヘクタール以上の土地」にこだわったワケ
前沢は、メジャーの“最前線のビジネス”を、自分の目で確かめてきたのだ。
「ぶっちゃけ、知らなかったんですよ、行くまでは。今みたいに説明したみたいな内容まで、そうだと思って行ってなくて、いろんな球団と話していくと、自分たちの思い描いたことは、間違いじゃないんだというのと、ちょっと先行してやっている事例がいくつかあるんだなと。それが自信というか、確信になったというのはありますね」
だから、新球場の候補地として、前沢は「20ヘクタール以上」と指定したのだ。
「だいたい球場だけだと、3.5へクタールから5ヘクタールでできるんです」
ちなみに、東京ドームは4.68ヘクタール、甲子園球場は3.85へクタールだ。
「じゃあ、なぜウチは5ヘクタールの場所を探さないで、20ヘクタール以上と区切って探したのか。理由は2つです。1つは、この3.5ヘクタールだけ、一生懸命やったって何の意味もない。そのうち、先細りしてしまうのは分かっていたんです。
もう1つ。シカゴ・カブスとボストン・レッドソックスのことですね。球団の歴史は100年以上ありますけど、彼らが今、何をやっているかというと、もともと小さな球場でビジネスをしながら、ここ5、6年の話ですが、周辺の土地を買収し出したんです。街づくりというか、不動産開発業になっているんですよ。
最初、その恩恵を彼らは受けられなかったんです。なぜなら、土地を持っていなかったからなんです。結局高くなっているときに周辺の土地を買収していくんですが、それで街づくりをしている。だから、20ヘクタールは必要だねって、20へクタール以上の場所を探したんです。
別に誰かが突飛な考えでやっているわけではなくて、必然です。やりこんでいくと、そこへ行きつくと思うんです。これがたぶん、話のすべてだと思うんですけどね」
スタジアム・ビジネスから、これを核とした街づくりへ。つまり『球場のある街』のグランド・デザインへと、球団ビジネスは広がりつつあるのだ。
喜瀬 雅則
スポーツライター