(※写真はイメージです/PIXTA)

日本ハムは今、北海道北広島市に、球場を核とした“新たな街”を創造しています。これは決して「札幌ドームでは思うようなビジネス展開ができないから」ではなく、日ハムにとって次のビジネスチャレンジです。とはいえ、なぜ球団が、球場だけでなくその周辺を含めた大規模なエリア開発にまで挑むのでしょうか? プロジェクトの“総指揮者”ともいうべき(株)ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長・前沢賢氏に取材してわかった、従来の「球団」という枠組みでは決して捉え切れない壮大なプランの一部を、本稿で見ていきましょう。

“新たな街”は「球場での観戦」を激変させるための装置

「これを言うと、あっちこっちから怒られちゃうかもしれないですけどね」

 

ここで前沢は、野球観戦のスタイルを「2種類」に分類した。1つは「テレビ観戦」。つまり「遠隔地の観戦」という言い方ができる。もう1つは「ライブ観戦」。それが「球場での観戦」となる。

 

「遠隔地観戦って、最初はラジオ、その後にテレビにいって、CSにいって、動画配信にいって、今はVR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)にいくのか、AR(オーグメンティッド・リアリティ=拡張現実)にいくのか、そこまでは分からないですけど、何が言いたいかというと、すさまじい勢いで技術革新しているんです」

 

地上波でのナイター中継が激減した一方で、BSやCSで試合開始から試合終了までの完全中継が当たり前のスタイルとなり、インターネット配信によって、場所を問わず、手元のスマートフォンで中継映像も、プレーの詳細な解説付きの速報も送られてくる。

 

ただ、この“観戦革命”を起こしたのは「実はプロ野球界じゃないんですよね」。

 

前沢の指摘に、合点がいった。

 

中継技術の進歩は、通信機器や通信網の飛躍的な発展に伴って起こったことなのだ。

 

「遠隔地観戦の方は“周辺の人たち”が革命を起こしたんです。だから、たぶん伸びたんです。ライブでの観戦での『主たるプレーヤー』は球団と球場ですが、イノベーションを起こしていないんです」

 

自己批判、そして球界批判も含めた、鋭い問題提議でもあった。

 

新球場、いや、北海道に“新たな街”を創るのは、その観戦スタイルに“革命”を起こすための、壮大な仕掛けでもあるのだ。

 

「我々が『主たるプレーヤー』であるべきなのは、このエリアなんです。イノベーションが起こっていないどころか、全く変わっていないんです。まずこれだろうというのが、僕の持論です。だからウチとしては、まずは野球場をボールパーク化する。そこへ経営資源を集中すべきだろうと思うんです。ライブ観戦は、全然技術革新をしていないんです」

 

そのヒントは、メジャーリーグにあった。

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喜瀬 雅則

PHP研究所

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